授業の良し悪しは9割準備で決まる!
セミナー
記事を書いた人
北田 覚 先生
SENSEI CAFEパートナー
大阪医療技術学園専門学校(教務副部長・学科長)
指導経験 16年
- 修士(教育学)
私自身も授業づくりや授業方法に悩みながら教員をしていましたが、教育の勉強をして自信を持って授業をしたいと、大学院で教育学や教育設計を学びました。
この記事では、そんな私の経験をもとに、教員歴の短い先生(長い先生でも??)がやりがちな授業作成方法を例示し、良い授業の条件と授業の作り方を解説します。
1.こんな授業になっていませんか?~初めて授業あるある~
良い授業の作り方を解説する前に、教員になりたての頃にやりがちな授業作成や授業方法をとりあげ、その問題点を明らかにし、そのうえで良い授業の条件と方法を見ていきましょう。
1)テキストのページ数をコマ数で割る
私が初めて授業を作る時に行った方法がまさにこれです。例えば、テキスト60ページ分を15コマでするから1回あたり4ページ進めれば良いと考え、授業資料や授業構成を決める方法です。
一見、悪くない方法ではありますが、テキストは全てのページが同じ分量でもないし、全てのページが同じだけ重要とは限りません。決まった分量だけ淡々と授業を進められるので、実施する側は楽ですが、それで生徒は理解しているのでしょうか?授業の到達目標を達成できているのでしょうか?
2)思っていたより授業が早く・遅く進む
授業の経験数が少ないと起こりがちな現象ですが、ベテランでもやってしまう先生もいるのでは?
「予定していた範囲が授業開始から半分の時間で終わってしまった。」
「もう授業終了の時刻なのに予定の6割しか進めていない。」
1コマの授業で何をどう教えるべきかという課題の分析や、教え方の組み立てが不十分だった可能性が高いです。また、生徒の実力を過少・過大評価してしまい、授業進度に影響を与えることもあります。どんな生徒が授業を受けているのかを理解することも、授業において重要な要素です。
3)試験前になってから問題を作る
試験が近づいてきたら、問題を作っている先生も多く見ます。えっ!?試験問題って試験前に作るものじゃないの?って思った先生は、この後の記事を絶対読んでほしいです。
評価の内容や評価の方法は、学習目標が決まった時点で決めるものです。また、最終評価が決まっているからこそ、中間評価の内容を決めることができます。
つまり、試験問題はあらかじめ作成しておくことが望ましいのです。
2.そもそも授業ってなに?
ここまで、ついやりがちな授業作成や授業方法を例示しましたが、そもそも授業って何なのでしょうか?そして、良い授業とは、どんな授業のことを指すのでしょうか?
1)授業とは?
辞書によると「学校などで、学問や技芸を教え授けること。」とあります。違う言い方をすると、生徒に知恵や技術を教えて与えることが授業です。つまり、生徒が知恵や技術を獲得できるものが授業ということです。
私自身の授業の定義は、林竹二氏の大好きな言葉に全て詰まっています。授業とは、『子どもたちだけでは到達できない高みにまで、しかも子どもが自分の手や足を使ってよじ登っていくのを助ける仕事』林竹二氏の著書「授業の中の子どもたち」にある一文です。
あなたは、どう授業を定義しますか?
2)良い授業の条件とは?
授業が生徒に知恵や技術を獲得させるものだとすれば、良い授業とはどんな授業なのでしょうか?良い授業とは、次の3つを満たすものです。
- 効果的であること:学習目標に到達できる
- 効率的であること:なるべく短時間で達成できる
- 魅力的であること:もっと学びたいと思える
どれかひとつが欠けるだけで、生徒の学習は持続しません。
そして、授業というと、Howばかりに気をとられ、Whyを忘れてしまいがちです。
- How:どうやって授業をするのか
- Why:なぜ学ばせるのか
良い授業の条件はHowが適切にできれば満たされます。
ただ、Why(どんな鍼灸師・柔道整復師にしたいか)がしっかりとあるからこそ、良いHowが作れます。しっかりとWhyを意識したうえで、次からの授業設計を進めてみてください。
3.適切な授業設計とは?授業設計の6つの手順
良い授業を行うための授業づくりには次の6つの手順があります。
| 1)出口を決める 2)テストを作成する 3)学習者を分析する 4)課題を分析する 5)教え方を組み立てる 6)評価計画を立てる |
|---|
順に解説するので、ひとつひとつ作業を進めてみてください。
1)出口を決める
初めにすることは出口を決めること、つまり、学習目標を決めることです。学習目標は次の3つに分解されます。
- 目標行動:学習者に「何をやらせるのか」を具体的に記述したもの
例)神経系の解剖生理学について、学習した内容を述べたり、記述したりできる - 評価条件:どんな条件の下で目標行動ができてほしいのか
例)四択問題(解答および誤答の修正)、穴埋め問題、記述問題を何も見ずに解答する - 合格基準:どの程度の正確さを求めるのか
例)期末試験にて100問中60問以上に正答したもの
ポイントは、目標行動が外部から観察可能な行動であることです。入学から卒業までの目標や学年ごとの目標は、どうしても一般的で抽象度が高い表現になりがちですし、それは仕方のないことでもあります。
その抽象度の高い目標(例えば、「信頼される」「適切な知識と技術を持った」など)は、具体的にどんな行動ができていれば達成したと言えるのかを明確にしなければ、どんな授業をするのかも、どうやって評価するのかも決められません。
だからこそ、目標行動を外部から観察可能な行動にすることが大切なのです。学習目標を決めることは、目標行動を明らかにすることです。
そして、どんな条件で目標行動ができれば良いのかが評価条件となり、どの程度できれば良いのかが合格基準となります。
ぜひまずは、しっかりと学習目標を目標行動に落とし込んでみてください。
2)テストを作成する
学習目標が決まれば、評価であるテストを作成します。
テストとは教える側と学ぶ側の両方が少しずつ向上していく道具であり、学習者が学習目標に到達できたかどうかを判断するとともに、授業の成果を確認するものでもあります。
つまり、生徒だけでなく、教員の評価とも言えるのです。テストの方法は学習目標で決めた目標行動と評価条件に合わせて決めていきます。目標行動は次の5つの学習課題いずれかに分類され、学習課題に応じてテスト方法が決まります。

また、テスト内容だけでなく、テスト時間に応じた量も考慮して作成していきましょう。
3)学習者を分析する ★11月ワークショップではここを徹底解説!!
授業を考えるうえで忘れてはならないのが、「どんな人たちが授業を受けるのか?」です。毎年の学習目標は同じでも、学習者は毎年変わります。
つまり、学習者の状況に応じた授業展開を考えなければなりません。そのためにも、学習者を分析することが、とても重要になります。
具体的には、
- すでに身につけている知識は何があるか?
- 学習する内容について、どの程度知っているか?
- 学習する内容への意欲はどうか?自信はあるか?
- 他の科目の成績はどうか?知能レベルはどうか?
- 学習方法の好みはあるか?どんな学び方が好きか?
- 集団(クラス)の特徴は?学習レベルのばらつきは?
これらのことを分析したうえで、授業の進め方を決めていきます。
4)課題を分析する
次は、学習する内容を深掘りする課題分析です。課題分析とは、1つの科目で「何を」「どこまで」教えれば良いのかを明らかにすることです。
分析方法は学習課題(学習目標)に応じて次の4つに分けられます。
| ア)クラスター分析:言語情報(覚えられているか) イ)階層分析:知的技能・認知的方略(学んだルールを他の問題で適用できるか) ウ)手順分析:運動技能(動作や行動ができるか) エ)態度の課題分析:態度(ある場面で望ましい行動を選択できるか) |
|---|
ア)クラスター分析
暗記したものを再生できるかどうかが目標になっている場合はクラスター分析をします。例えば、「筋肉の起始と停止を覚えているか」、「経穴361穴を覚えているか」などです。
クラスターとは、それぞれのまとまりを表すので、どのまとまりごとに分類するかを決めて、分類ごとに授業を実施します。具体的には、筋肉であれば、上肢・下肢・体幹・頭部の4つに分類して、それぞれ教えていくという方法です。
実際、多くの学校では、この部位ごとの分類で授業をしているのではないでしょうか。
分類は部位だけではなく、「起始する骨」や「停止する骨」や「支配神経」など、いろんな分類方法が考えられます。その中で、学習者に適した分類を選択して、授業方法を考えていきます。
また、クラスター分析はどこから教えても分析手法上は問題ありません。ただ実際は、他の科目との関連や学習者分析に応じて、どの分類から教えた方が覚えやすいかを考慮して決めていきます。
イ)階層分析
学んだルールを適用できるかどうかが目標になっている場合は階層分析を用います。
例えば、「症例から病態および治療部位(治療穴)を選択できる」という目標は知的技能であり、階層分析を使います。
「症例から病態および治療部位(治療穴)を選択できる」という目標に到達するためには、そもそも「病態に関する知識」や「治療部位に関する知識」を持っていないと到達できません。
つまり、学習目標に到達するためには、前提知識の獲得が必要であり、階層的に知識を積み重ねなければなりません。
クラスター分析と違い、どこから教えても良いわけではなく、前提となる知識から順序立てて教えなければならず、階層分析をすることで、その順序を明確にします。
ウ)手順分析
体を動かしてできるようになる目標では手順分析を用います。
例えば、「40mm20号鍼を使用して鍼枕に1.5cm直刺を行える」という目標は運動技能であり、何をどの手順で進めていくかのステップを手順分析で明らかにします。
「鍼を刺す」という行為がどんなステップで構成されているかを紐解いていく作業です。
例:①前揉法⇒②押手⇒③鍼管挿管⇒④弾入・切皮⇒⑤刺鍼
また、「②押手」には半月と満月があるといった、ステップの中でさらに下位となる前提知識や技術があれば、それらも明らかにします。
エ)態度の課題分析
態度とは自分の行動を方向づける気持ちであり、医療従事者としての態度はこうあるべきだという目標があるはずです。しかし、態度の課題分析には決まった手法がありません。それでも、どう考えるかのヒントは存在します。
- その態度を選ぶ理由は何か?
- その態度をするために必要なことは何か?
この2点を明らかにし、学校や学科としての態度の目標を決め、授業に落とし込んでいきます。
5)教え方を組み立てる ★11月オンラインワークショップではここを徹底解説!!
ここまでできてやっと実際の授業を組み立てていきます。
課題分析したひとまとまりの内容を、何時間かかる(かけられる)かを検討し、授業の見通しを持つことが大切です。
また、授業のねらい(授業目標)をしっかり持ち、学習者が学習目標に到達できるよう授業を構成していきます。
授業構成の基本は「導入」⇒「展開」⇒「まとめ」の3段階です。
そして授業構成を考えるうえで欠かせないのが『ガニェの9教授事象』という授業場面に応じた教員の働きかけです。
【導入】
①学習者の注意を喚起する :教材の世界に入り込めるか、周波数を合わせられるか
②授業の目標を知らせる :何が出来るようになるのか⇒意欲・期待感
③前提条件を思いださせる :これまでの知識・技能で本展開に必要なことは
【展開】
④新しい事項を提示する :既習事項との相違・関連性を含め提供
⑤学習の指針を与える :納得できる意味づけを持たせる助言
⑥練習の機会をつくる :頭の中からの取り出し、技能の応用
⑦フィードバックを与える :すぐに出来具合を知らせる、失敗できる環境づくり
【まとめ】
⑧学習の成果を検証する :本番で成果を試す ※評価と練習の区別
⑨保持と転移を高める :忘れた頃にもう一度、次の学習や発展問題の提示
通常、授業や教材は、【導入】と【まとめ】と、「複数のチャンク」に分かれた【展開】で構成されます。チャンクとは、新しい内容を説明し、練習し、確認するためのひとかたまりのことです。複数のチャンクを一度で説明すると、情報が多すぎて理解しづらくなるため、チャンクごとに、説明⇒練習⇒確認を展開のなかで繰り返すのが賢明です。
●【導入(①~③)】⇒【展開|情報提示(④⑤)⇒学習活動(⑥⑦)】⇒【まとめ(⑧⑨)】
※④~⑦をチャンクの数だけ繰り返す
※チャンクが複数の場合、全てのチャンクが終了したあと、「総合練習」として全体の⑥と⑦を行う

6)評価計画を立てる
最後に形成的評価の計画を立てます。すでにテストは作成していますが、学習後に実施するテストは総括的評価といい、学習中に実施する評価を形成的評価と言います。
いわゆる小テストや平常評価と呼ばれるものです。
学習者全員が学習目標に到達するためには、学習後のテストだけでなく、学習中に目標に近づいているかをチェックすることが大切です。
そのためにも形成的評価は欠かせません。15回の授業の中で、「いつ」「どんな内容」「どんな方法」で形成的評価をしていくのかを計画します。
また、形成的評価で目標に到達しなかった学生に対し、どんなフォローをしていくのかも考えておくことが重要です。
4.まとめ
今回、授業づくりあるあるの問題点から、良い授業の条件と授業設計の方法を解説しました。
良い授業の条件
- 効果的であること:学習目標に到達できる
- 効率的であること:なるべく短時間で達成できる
- 魅力的であること:もっと学びたいと思える
授業設計の方法
| 1)出口を決める 2)テストを作成する 3)学習者を分析する 4)課題を分析する 5)教え方を組み立てる 6)評価計画を立てる |
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これまでも、記事を読まれている先生は多くの工夫や改善をされてきているはずです。
さらに良い授業を実施するためにも、ぜひ、現状の授業の作り方を振り返り、適切な授業設計を用いて授業を実践してみてください。
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ワークショップお申込み
■タイトル;教育学修士が解説! 知らないと損する、授業づくり・小テストづくりの落とし穴 ~もっと受けたい授業はつくれる~
■講師:北田覚先生
■日時:2023年11月29日(水)18:00-20:00
■形式:オンライン講義(Zoomウェビナー)
■受講料:無料
■詳細・お申込み:こちらをご参照ください