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柔道整復師国家試験の難易度は?合格率と勉強法

柔道整復師を目指すあなたにとって、国家試験の難易度や合格までに必要な勉強量は最も気になるポイントではないでしょうか。近年の合格率は50%台から60%台で推移しており、受験生の約4割から半数が不合格となっているという現実があります。

3年以上の養成課程を修了した学生でこの合格率ですから、決して簡単な試験とは言えません。今回は、 国家試験の概要となぜ「難しい」と感じられるかの背景、そして合格に向けた勉強法を解説します。

柔道整復師の国家試験の概要

柔道整復師は、骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷などの外傷に対して、手術を行わず徒手整復や固定などの施術を行う国家資格です。整骨院などの名称で開業が可能な数少ない医療系国家資格の一つであり、資格取得後のキャリアの幅が広いことが特徴です。

柔道整復師になるためは国家試験に合格する必要がありますが、受験するにも文部科学大臣が指定した学校または都道府県知事が指定した柔道整復師養成施設において、3年以上必要な知識と技能を修得し卒業または卒業見込みであることが前提となります。

その国家試験は厚生労働省が所管し、公益財団法人柔道整復研修試験財団が試験運営を担当しており、 年1回、例年3月上旬(第1日曜日)に全国の主要都市で実施されます。受験願書の提出期間は、例年12月下旬から1月中旬で受験手数料は23,900円となっております。

実際の試験はと言いますと、午前の部が9:30~12:00(150分)で問題数は約125問、午後の部が13:30~16:00(150分) で問題数は約125問、つまり午前午後で300分(5時間)で250問と盛り沢山。出題形式はすべて四者択一のマークシート方式の1問1点の配点となっています。

何と言っても出題範囲広く、

• 基礎医学分野 : 解剖学、生理学、運動学、病理学概論
• 社会医学分野 : 衛生学・公衆衛生学、
• 臨床医学分野 : 一般臨床医学、外科学概論、整形外科学、リハビリテーション医学
• 専門分野 : 柔道整復理論(最重要科目)、関係法規

以上11科目もあり、これらの科目は単に知識を暗記するだけでなく、臨床現場で応用できるレベルまで理解を深める必要があります。さらに、厄介なのは必修問題と一般問題の合格基準です。

• 必修問題: 50問中80%以上(40点以上)の正答が必要
• 一般問題: 200問中60%以上(120点以上)の正答が必要
• 総合判定: 必修問題と一般問題の両方で合格基準を満たすことが必須

ということで、この合格基準は過去5年間一貫しており、必修問題で基準を満たせなければ、一般問題でどれだけ高得点を取っても不合格となるため、基礎知識の確実な定着が求められます。

 

柔道整復師国家試験の難易度はどのくらい?

柔道整復師国家試験の難易度はどのくらい?

柔道整復師国家試験の難易度を客観的に測るため、近年の合格率の推移と他の医療系国家資格との比較を行います。
 

合格率の推移から見る難易度

国家試験の合格率は年度によって変動がありますが、近年は50%台から60%台で推移しています。これは受験生の約4割から半数が不合格になるということを意味しており、試験の難しさがうかがえます。

近年の合格率推移(全体)


回数 実施年 受験者数 合格者数 合格率
第29回 2021年 4,561人 3,011人 66.0%
第30回 2022年 4,359人 2,740人 62.9%
第31回 2023年 4,521人 2,244人 49.6%
第32回 2024年 5,027人 3,337人 66.4%
第33回 2025年 4,513人 2,607人 57.8%


(出典:公益財団法人 柔道整復研修試験財団)

上記から、第31回試験では合格率が49.6%と過去最低水準まで下がり、受験生の半数以上が不合格となりました。第32回では66.4%まで回復しましたが、第33回では再び57.8%に低下しており、年度によって難易度にばらつきがあることがわかりますね。

特に注目すべきは、新卒者と既卒者で合格率に大きな開きがある点です。
2025年(第33回)の内訳:
• 新卒受験者:3,188人中2,419人合格(合格率75.9%)
• 既卒受験者:1,325人中188人合格(合格率14.2%)

2023年(第31回)の内訳:
• 新卒受験者:3,201人中2,092人合格(合格率65.4%)
• 既卒受験者:1,320人中152人合格(合格率11.5%)

新卒者の合格率は約65%~76%であるのに対し、既卒者は約11%~14%と極めて低くなっています。これは、一度不合格なり学習環境から離れたことで知識の薄れ、モチベーションの維持が困難が起きるからと考えられます。つまり、現役合格を目指すことが最も効率的だということです。

他資格と比較した難易度

柔道整復師国家試験の難易度をより客観的に理解するために、類似の医療系国家資格と比較してみましょう。

医療系国家資格の合格率比較(2025年実施試験):


資格名 受験者数 合格者数 合格率
柔道整復師 4,513人 2,607人 57.8%
はり師 4,150人 3,066人 73.9%
きゅう師 4,094人 3,068人 74.9%
あん摩マッサージ指圧師 1,160人 1,011人 87.2%
理学療法士 12,691人 11,373人 89.6%

(出典:厚生労働省医政局「各医療系国家試験の合格発表について」2025年3月)

理学療法士で養成課程を修了した学生の約9割が合格、あん摩マッサージ指圧師も同様に高い合格率を維持、はり師・きゅう師は約4人に3人が合格の中、柔道整復師は約6割の合格(つまり4割以上が不合格)と、柔道整復師の合格率は他の資格と比べて明らかに低い傾向にあることがわかります。

なぜこのような差が生まれるのかを調べていくと、業界の歴史的経緯が合格率に反映していることに辿りつきます。1998年の規制緩和により急増した柔道整復師養成施設の急増は、教育のばらつきを生んだ結果、2015年に厚生労働省は卒業生の臨床能力の低下を公式に発表しました。

その解決策として、医療の質を担保するためにとられたのが国家試験の難易度を上げるという2020年の改定でした。国民にはとてもいい政策ですが、学生には悩ましい話です。
  

難易度が高いと感じる理由

国家試験で受験生が直面する具体的な課題から、「難しい」を分析します。

暗記量の多さと出題範囲の広さ

国家試験が難しいと感じられる最大の理由は、圧倒的な暗記量と広範な出題範囲です。11科目250問、各科目で求められる知識は専門的で詳細なものばかりです。

1.基礎医学分野

・解剖学 : 人体の約206個の骨の名称、600以上の筋肉、複雑な神経系と血管系など膨大な上に、ただ暗記するだけではだめで、構造を詳細に理解する必要があります。

・生理学 : 各器官の働きや生命活動のメカニズム、体内で起こる現象の因果関係を理解することが重要です。

・運動学 : 身体の動きや運動機能、細かい関節の動きや筋肉の作用を立体的に理解する必要があります。

・病理学概論 : 病気の成り立ちや進行過程を理解します。

2.社会医学分野

・衛生学・公衆衛生学 : 予防医学や集団の健康管理、またそれらの統計データや制度に関する知識も必要です。

3.臨床医学分野

・一般臨床医学 : 内科的疾患の基礎知識を学びます。

・外科学概論 : 外科的処置や手術の基礎を理解します。

・整形外科学 : 骨・関節・筋肉の疾患や治療法について深く学びます。柔道整復師にとって最も重要な科目の一つです。

・リハビリテーション医学 : 機能回復の理論と実践を学びます。

4.専門分野

・柔道整復理論 : 柔道整復術の技術と理論の核心であり、各種骨折や脱臼の診察方法、整復技術、固定法など実践的な知識が求められます。これらは教科書的な知識だけでなく、実習で身につけた技術的な理解も必要とされます。

・関係法規 : 柔道整復師法や医療関連法規、保険制度について学びます。

また、これらの知識は単に暗記するだけでなく臨床問題で応用できるレベルまで理解を深める必要があり、例えば、「この症状からどの部位の損傷が考えられるか」「適切な固定法は何か」といった判断ができなければなりません。
 

試験の科目と出題形式

試験形式自体も、受験生にとって大きなハードルとなります。本番は5時間の長丁場、しかして問題数は250問と、1問あたり約1.2分というペースで解き進める必要があります。時間配分を誤ると、最後まで解答できずに終わってしまう可能性もあります。

また、「絶対に落とせない」必修問題の合格基準が80%以上と重圧。そして、受験生を悩ます「最も適切なものはどれか」、「誤っているものはどれか」といった設問や臨床事例を提示して適切な処置や判断を問う問題などバリエーションも豊富です。

特に「誤っているものを選べ」の場合、全選択肢を正確に理解していないと解答できないという出題の妙。実によくできています。
 

臨床問題と基礎問題のバランス

臨床問題の厄介さは、基礎問題が解剖学や生理学などの基礎知識を問う問題で用語の定義や基本的なメカニズムの理解を確認するものであり、教科書的な知識で対応可能である(例:大腿骨の近位端にある突起はどれか)のに対し、基礎知識を実際の臨床場面に応用する力を試される点です。

「○歳男性、転倒して手をついた後に手関節の痛みと腫脹を訴えている。最も考えられる損傷部位はどれか」といった様に、患者の年齢、性別、受傷機転、症状、身体所見などの情報から適切な診断を行い正しい治療法を選択するために、複数の知識を統合して判断する必要があります。

解剖学の知識(損傷が疑われる部位の構造を理解)→整形外科学の知識(典型的な症状パターンを把握)→柔道整復理論(適切な診察法や固定法を判断)→一般臨床医学(他の疾患との鑑別)といった思考プロセスを身に着けていなければ解けないということです。

そんな臨床問題が近年の試験では、思考力を要する良質な(受験生には迷惑な)問題が増加傾向にあります。

以上を総合すると、必修問題対策として基礎固めが重要な一方、一般問題に関しては臨床問題の比重が高まっているので知識の応用力も養う必要もあり、このバランスを取ることが合格への鍵となります。
  

合格に向けた効果的な勉強法

国家試験の難易度を踏まえ、効率的な勉強法を紹介します。

学習スケジュールの立て方

国家試験合格には、もちろん計画的な学習が不可欠です。ここでは養成施設の最終学年にスポットを当てて立案いたします。

【基礎固めフェーズ】4月~7月
この時期の目標は、基礎知識の体系的な理解です。各科目の教科書を通読し、全体像を把握しましょう。解剖学といった暗記ものも手を付けないと間に合わなくなるので、ノートにまとめながら重要事項を整理し、わからない点はすぐに先生に質問しましょう。

○ポイント : この時期は焦らず、じっくりと基礎を固めることが重要です。後の応用学習や臨床問題対策の土台となるため、理解が曖昧な部分を残さないようにしましょう。

【応用・臨床フェーズ】8月~10月
この時期の目標は、過去問を通じた出題傾向の把握と応用力の養成です。過去問(最低5年分、できれば10年分)を開始し、間違えた問題や理解不足の箇所を洗い出すことで苦手科目・分野を特定し、重点的に復習することです。可能であれば、模擬試験を受けて実力を測定するのも良いです。

○ポイント : 過去問は「傾向を知る」ための最重要ツールです。最初は点数にこだわらず、出題パターンや問題形式に慣れることに重点を置きましょう。筆者が効果があったと思うのは、教科書と過去問を照らし合わせて出題率をはじき出すというもので、後半戦で非常に重宝しました。

【弱点克服フェーズ】11月~12月
この時期の目標は、苦手分野の徹底克服と知識の定着です。過去問を2周目、3周目で繰り返していく中で苦手分野を特定したり、模擬試験の結果を分析して弱点を特定するなど辛抱強く取り組みましょう。

○ポイント : この時期から臨床問題に慣れるために症例問題にも集中していくと良いでしょう。また、暗記が必要な項目を繰り返しが重要ですので、記憶への定着を目的に復習も欠かせません。

【総仕上げフェーズ】1月~2月
この時期の目標は、実戦力の強化と最終確認です。全範囲の総復習はそうですが、特に必修問題の演習は重点的に行い、80%以上の正答率を確保は絶対です。可能な範囲で模擬試験を受け、時間配分や問題への対応力を磨くことも重要な時期となります。

○ポイント : この時期は、新しい知識を詰め込むより、間違えやすいポイントや過去問の出題率を参考に重要事項をまとめた「最終確認ノート」を充実させると試験当日も心強いです。

【直前調整フェーズ】3月
この時期の目標は、コンディション調整とメンタルケアです。ここまできたら、自分を信じましょう。最終確認ノートの見直し、そして十分な睡眠と体調管理を最優先すべきです。人によっては、試験会場への行き方や前泊の手配など実務的な準備も抜かりなく行うと安心します。

○ポイント: 直前期に無理をして体調を崩すと、本番でのパフォーマンスが大きく低下します。試験前日は早めに就寝し、当日は余裕を持って試験会場に到着できるよう準備しましょう。
 

苦手科目の克服と模試の活用

国家試験ではすべての科目から出題されるため、特定の科目だけを捨てるという戦略は残念ながら通用しません。では、苦手科目が「何か」となると、やはり過去問、模擬試験の結果や養成施設の定期試験で苦労した科目というのが一般的でしょう。では、如何に克服していくのか・・・

1. 基礎に立ち返る
苦手意識がある科目は基礎的な理解が不足していることが多いので、教科書を丁寧に読み直すや専門用語の定義や概念を確実に理解する、「なぜそうなるのか」といった理解を深めることです。

2. 視覚的に理解する
解剖学や運動学などは、模型やイラストや写真が豊富な参考書などから視覚的に理解すると覚えやすいです。自分で図を描いたり、筋肉の起始・停止などは模型で確認したりするのも効果的です。

3. 繰り返し演習
苦手なものほど人間は避けがちですが、苦手だからこそ繰り返しが重要です。同じ問題集を複数回解くや間違えた問題を分析したり、間違い対策としてノートにまとめると良いです。

4. 友人や先生に質問
分からないものは、悩んでもどうにもなりません。同級生と勉強会を開いてお互いに教え合うや、講師に質問して理解を深めるべきです。特に、他人に説明するというのはとても勉強になります。

5.模擬試験のフル活用
模擬試験の結果は、弱点を知る貴重なデータです。分析、復習と余すことなく活用しましょう。また、学校模擬試験だけでなく外部の模擬試験も応用力向上に最適なので、積極的に受けましょう。

6.過去問の重要性
出題傾向の特定、問題形式への順応、時間配分の練習と過去問にも無駄な部分はありません。ただし、全く同じ問題が出ることは少ないため、丸暗記ではなく知識や考え方を理解しましょう。

人間、誰でも苦手なものと対峙するのはつらいものです。しかしここを乗り越えてこその国家資格者です。踏ん張り時ですよ。
  

まとめ

柔道整復師国家試験は、3年以上の養成課程で得た知識と技術の集大成として臨む重要な試験です。難易度は決して低くありませんが、計画的に学習を進め、基礎を固め、過去問演習を繰り返すことで、確実に合格を目指すことができます。

試験までの道のりは長く、時には不安や焦りを感じることもあるでしょう。しかし、柔道整復師として患者さんを助けるという目標を持ち続け、一歩ずつ着実に学習を進めていけば、必ず合格を掴むことができます。

 
【参照URL】
公益財団法人 全国柔道整復師学校協会 柔道整復師とは
公益財団法人 柔道整復研修試験財団 国家試験 試験概要
公益財団法人 柔道整復研修試験財団 受験者数
厚生労働省 国家試験合格発表 理学療法士
厚生労働省 国家試験合格発表 あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師
最高裁判所 平成9(行ウ)31 柔道整復師養成施設不指定処分取消請求事件 平成10年8月27日 福岡地方裁判所 警察関係
厚生労働省 2015年12月11日 柔道整復師学校養成施設カリキュラム等改善検討会(第1回) 議事録

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