鍼灸師

鍼灸師とはどんな資格?仕事内容や年収、就職先などをご紹介

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鍼灸師は、おもに鍼または灸を用いて患者様の治療にあたります。鍼灸師と一口にいっても、はり師ときゅう師は別の国家資格であり、略して鍼灸師と称しています。

鍼灸は、古来より患者様の辛い症状や疾病予防に貢献している歴史ある施術方法です。鍼灸師は、鍼灸院、病院などの医療機関のほか出張施術など多くの現場で活躍しています。

鍼(はり)、灸(きゅう)とは

鍼施術にはさまざまな方法があります。

はり師は、髪の毛くらいの細い針で体表にあるツボといわれる経穴を刺激し、自然治癒力を引き出すお手伝いをします。

東洋医学の考え方に、森羅万象は五つの要素(木・火・土・金・水)から成立する五行論と、相対的概念である陰と陽から成立する陰陽論があります。これらの理論を運用して、身体を流れている気や水や血の流れを良くし、変調をきたした身体の状態を回復させることを目的に鍼灸施術を行います。

現在、鍼灸の治効機序の解明に関する研究も多く報告されるようになり、西洋医学の視点からも鍼灸の効果が一部説明できるようになってきました。鍼の施術方法には、東洋医学理論を基に施術する方法のほか、鍼に電気を流す低周波鍼通電療法のほか、太さも長さも1㎜にも満たない鍼を経穴に張り付けたりするようなものまで、さまざまなものがあります。

一本の鍼が全身に影響を及ぼす可能性のある魅力的な施術方法です。

一方、灸はよもぎの葉が原料である艾(もぐさ)を用いて行う施術方法であり、灸施術にも多くの種類の方法が存在します。温かく心地よいお灸は多くの患者様が好まれます。

筋肉の緊張を和らげ血液循環を良くするには最適な方法であり、特に冷え症や婦人科疾患などに威力を発揮します。鍼灸は主に肩こりや腰痛などの症状に対して行うイメージを抱いている方も多いかもしれませんが、WHOにおいても鍼灸を適応としてる疾患は整形外科的疾患のほか、消化器系疾患、循環器系疾患、呼吸器系疾患、婦人科疾患、泌尿器科疾患、皮膚科疾患など多岐に渡ります。

鍼灸師の仕事内容

鍼灸師の仕事は一言で臨床といっても幅が広いです。皆さんが抱いている将来像に併せて仕事を選ぶと良いでしょう。

スポーツ分野

日本でオリンピックが行われるということもあり、スポーツに関心を持つ国民を多いことでしょう。スポーツはプロ、アマ問わず多くの国民が触れることの多い分野でもあります。

トップアスリートに帯同するような臨床家を目指している方は、スポーツ分野に特化した知識が求められます。スポーツ分野はコンディショニング・障害に対する施術・障害の予防の指導などあはき施術以外の技量も求められます。

介護分野

介護分野は主に高齢者や障害者が対象となります。高齢者で筋力が低下し筋萎縮をおこしたり、中枢系疾患で体に麻痺が後遺症としてのこった場合、これらに対して少しでも症状が緩和させたり、悪化させないように、鍼灸を施します。

美容分野

しわ、たるみなど美容領域は生活を豊かにするうえでも大切な役割を果たします。美容を維持することで精神的に良い影響をもたらすことができます。顔面に鍼灸施術をすることで局所的に血行を良くすることはできます。さらに、東洋医学の考えでは全身が気血の流れで繋がっている為、下肢や体幹の経穴にも刺激を入れることで、美容の効果をより発揮できる可能性を秘めているのです。

エステも良いですが、鍼灸の力で美容を追求してみるのも魅力的なお仕事です。

鍼灸師になるには

鍼灸師になるには、厚生労働大臣認定の専修学校または文部科学省認定の大学で鍼灸の学科を設置しているところで、一定時間数、学修する必要があります。学校を卒業して初めて国家試験を受験する資格が得られます。

履修に要する時間は、専修学校は3年間、大学では4年間となり、卒業すると、専門学校は専門士、大学は学士の学位を取得することができます。大学では鍼灸以外の教養に関する学科も学びます。

学校卒業後に資格を取得する

高等学校又は大学を卒業してから、専門の技術職である国家資格を取得する方は多くいます。また、社会人においては定年退職を待たずして、手に職をつける方もおられます。東洋医学の凄さに惹かれて、鍼灸師の国家資格を目指す受験者層は若手からご年配の方まで厚いです。

鍼灸師の国家試験について

医療系の資格である鍼灸師になるためには国家試験に合格しなくてはなりません。国家試験の受験科目は、解剖学、生理学、病理学などの西洋医学分野に関する科目とはりきゅう理論や東洋医学に関する理論及び臨床に関する科目の双方から合わせて180題出題され、6割が合格ラインとなります。

鍼灸師の国家試験難易度

鍼灸師の国家試験の難易度は、合格率からしても決して難しいものではありません。ただ、たまに難しい問題にあたる時もありますので油断はできません。学校教育で使用されている教科書をしっかり勉強していれば合格できますので、しっかり取り組んでいればそれほど合否について心配される必要はありません。

鍼灸師の国家試験合格率

鍼灸師の国家試験の最近の合格率はおよそ70%となっています。2021年における他の医療系国家資格では合格率の高い順で、看護師90.4%、あん摩マッサージ指圧師84.1% 理学療法士79%、柔道整復師66%となっています。

鍼灸師の就職先

鍼灸師の就職先は多岐にわたります。皆さんが望む内容、条件と合ったところを選ぶと良いでしょう。

鍼灸整骨院

現在、柔道整復術を業とする接骨院は全国に5万以上存在しています。このなかに鍼灸施術も行える鍼灸整骨院もかなりあります。鍼灸接骨院は主に捻挫や打撲など運動器の障害の患者様が来院されます。整骨分野の診療は保険が適用されますが、鍼灸は自由診療となるのが一般的です。

ただし、医師の同意が得られれば、主にリウマチ・神経痛・頚肩腕症候群・五十肩・腰痛症・頸椎捻挫後遺症においては保険が適用となります。柔道整復師と一緒にお仕事をされたい方は鍼灸接骨院はとても魅力的な職場です。

鍼灸院

全国に3万以上ある鍼灸院には、それぞれ様々な特徴があります。例えば、スポーツ障害を得意とした鍼灸院や不妊症など産婦人科領域を専門にした鍼灸院などです。さらに、施術方法も東洋医学的な理論を基にした方法や解剖生理学に則った現代医学的な理論を根拠にした方法など多種多様です。また、予防や美容など疾患以外に対するアプローチを売りにしている鍼灸院もあります。

さまざまなタイプの鍼灸院が存在するので、きっとご希望に沿った鍼灸院を見つけることができるでしょう。

介護施設

超高齢化社会になりつつある現在、疾病構造の変化にともない高齢者は不定愁訴をはじめ多くの症状を抱えています。身体活動も低下すると精神状態にも影響を及ぼす為、心理的因子にも好影響もたらす鍼灸は、高齢者のQOLを高める可能性があります。

認知症に関する症状に対しても鍼灸の効果が明らかにされつつあり研究が進んでいます。介護施設では鍼灸を採り入れているところもあります。鍼灸は高齢者に元気を与えるとても大きな役割を果たしているのです。

開業

鍼灸師は医師と同じく開業する権利があります。ただし法律上、診断することはできません。患者様に丁寧に問診し、身体所見を得ることでより正確な病態把握を行い、症状に適した施術方法を導き出します。

患者様から信頼できる地域に密着した鍼灸院を目指すのも良い選択肢でしょう。開業はちょっとしたスペースがあれば実現可能です。マンションの一室で開業されている鍼灸師もいます。開業資金も規模などによって変わりますが、ご自身の予算に合わせて開業できるのが魅力的です。はりともぐさと技術があれば、誰でも開業することができます。

教員養成科

教員養成科は学科名から教員になる為の学科として想像する方も多いでしょう。しかし、そのような事はまったくありません。教員養成科には最初の1年間は臨床専攻課程といい、外来など臨床実習を中心とした臨床に特化した内容が盛りだくさんのカリキュラムとなっており、国家試験取得後でいきなりの開業は不安、臨床に関する勉強が不足している等、臨床に関する不安を解消する為の課程です。

臨床に関する勉強を1年間みっちり実施することで、臨床家としてのかなりの自信がつきます。さらに、もう1年間(教員養成課程)、臨床及び教育系の課程を修了すれば、あはき養成施設で教員となれる資格を取得することができます。教えることを仕事にしたい、臨床をしながら教育にも携わりたいなど仕事の幅を広げたい方にお勧めです。

鍼灸師の平均的な給与

入社する会社により給与は様々ですが、昔に比べると平均給与は上昇しています。全国展開している大手鍼灸整骨院グループへ入社すると各種保険もついて安定した収入が得られます。また、近年は週休2日制の勤務先も多く、収入を多く得たい方は週休1日で働くことで調整は可能です。給与としては初任給で22万円から26万円ほどの会社が多いです。

まとめ

上記で示したように、鍼灸師として活躍する場は多くあります。ご自身のやる気次第で、道は開けます。まずは、漠然とでもよいので目標をたててご自身の将来像を描き、進路について決めてみてはいかがでしょうか。

 

執筆者プロフィール

大内 晃一
大内 晃一東京医療福祉専門学校 鍼灸マッサージ教員養成科 学科長
平成7年、東京理科大学理工学部卒業後ゼネコンを経て東京医療福祉専門学校卒業。
筑波大学、順天堂大学等での臨床経験を積んだ後、母校で教鞭をとる。明治国際医療大学大学院(鍼灸学修士) 新潟大学大学院(医学博士)
東京医療福祉専門学校鍼灸マッサージ教員養成科学科長。
東京医療学院大学保健医療学部非常勤講師。
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