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柔道整復師の「就職先」10のパターンを徹底解説!

治療家業界に特化した就職・転職支援サービスとして、業界最大級のウィルワンエージェントで、学生を専門に就職サポートを行うキャリアパートナーの山田さんにお話を伺いました。

記事を書いた人

山田 陽

株式会社エス・エム・エス ウィルワンエージェント キャリアパートナー
柔道整復師 帝京平成大学卒業
 
高校までクラブのサッカーチームに所属。サッカーをプレーする中で多くの怪我に見舞われ、「怪我の予防・選手の怪我に寄り添える治療家になりたい」と考えて柔道整復師資格を取得。
現在は治療家業界に就職をする学生に向けて、自身の経験や業界の市況を伝え、有資格者がキャリアについて悩むことがないよう就職活動のサポートをしている。

昨今、柔道整復師の活躍の場が広がっています。柔道整復師の資格を所有する人は、捻挫や骨折の治療ができ、さらにリハビリに対する知識とスキルも有しています。
今回は、接骨院・整骨院以外に広がる柔道整復師のニーズと、就職先として考えられる10のパターンを徹底解説します。

日本社会の高齢化で高まる柔道整復師のニーズ

柔道整復師は骨折や脱臼などの外傷の治療にあたるだけでなく、リハビリなど機能訓練のサポートも可能です。そのため整骨院や接骨院だけでなく、さまざまな場でその役割が求められています。

日本は超高齢化社会を迎え、介護分野においても柔道整復師は重宝されるようになってきました。高齢になると身体能力や筋力が低下し、これまでできていた動作が難しくなることも増えてきます。
また、近年は高齢者が要介護状態になるのを防ぐ「介護予防」に社会全体で力を入れています。
そんなとき、専門的な提案をできる存在が柔道整復師なのです。

外傷の治療や機能回復、リハビリを担える柔道整復師の活躍の場はまだまだ増えていくと考えられます。

柔道整復師の就職先は多岐にわたり、さまざまな業界でその知識やスキルが求められています。

柔道整復師には具体的にどのような就職先があるのでしょうか。早速、10のパターンをみていきましょう。

柔道整復師の就職先1:整骨院・接骨院

整骨院や接骨院はもっとも一般的で、採用枠も大きい就職先です。
骨折や脱臼、ねんざなどの外傷に対し手技を使って治療する保険診療だけでなく、
近年は肩こりや腰痛など慢性的な症状に対した施術、ダイエットのサポートなどの自由診療を取り入れる院も増えてきています。
一概に整骨院や接骨院といっても、セールスポイントはそれぞれに異なることも多いため、自分がどんな施術をしたいかなどをしっかり見極めて、就職先を選ぶようにしましょう。

整骨院や接骨院で働く場合、就職先によって収入も待遇も大きく異なります。そこで、2023年1月20日現在の整骨院の求人の給与・待遇を調査してみました。

▽複数の求人からみた柔道整復師の整骨院における給与・待遇例

A院 B院 C院
月給 23万円~
賞与年2回(1-2ヶ月分)
24~32万円(週休1.5~3日)
賞与なし
20万円+歩合(実績:初月26~27万円)
※売上の40%をスタッフの能力に合わせて配当
賞与年2回
休日 ・シフト制の月8日休み
・夏季休暇・年末年始休暇あり
・土曜午後・日曜・祝日休み+シフト制
・GW休暇・お盆休暇・正月休暇・ハネムーン休暇(4日)
・1.5休/完全週休2日/土日固定休/2.5休/完全週休3日/時短勤務 選択可
・週休2日
・夏季休暇・年末年始休暇あり
その他 ・入社1ヶ月間は有期雇用契約となる。
期間中は雇用保険・労災のみの加入となる。
・交通費支給(月上限17,000円)
・月6日休みも相談可能
・20:20完全退勤
・営業時間外の勉強会なし
・交通費支給(全額、ただし、転居手当をもらう場合は交通費と相殺)
・書籍代支給(月上限10,000円)
・セミナー代支給(月上限30,000円)
・昼食代支給(売上80万以上達成が条件)
・学費一部負担(入社後、新たに資格を取りたい場合)
・飲み会やイベント、レクリエーション(全額、会社負担)
・交通費支給(全額)

表はあくまで一例ですが、同じ整骨院でも、給与・休みの取り方・福利厚生の内容が全く異なりますよね。
もちろん、条件だけでなく、ターゲットにしている患者様の層、施術の単価、店舗数が大幅に異なっており、だからこそ勤務条件にも違いが出ています

また、給与については、基本給にみなし残業代が含まれている院がほとんどです。
みなし残業とは、1か月で発生するであろう、おおよその残業時間のことです。
みなし残業代含むとは、一定時間分のみなし残業分の賃金を基本給のなかにあらかじめ組み込んで支払うことを指します。

たとえば、基本給18万円+みなし残業代4万円=月給22万円、といったようなかたちになり、みなし残業代を含む給与体系の場合は、「毎月、一定時間の残業がある」と考えていいでしょう。
なお、その月の実残業時間がみなし残業時間を下回った場合でも、残業しなかった時給分が給与から差し引かれることはありません。

C院は基本給に歩合も上乗せされるケースです。経験を積み患者様から指名を受けるような施術者になれば、月給50万円を超えることもあるようです。

柔道整復師の就職先2:整形外科等医院

整形外科や外科などの医院やクリニック内にあるリハビリ室で働く柔道整復師もいます。
多くの場合、みなしPTとして、患者様の運動機能回復のためのリハビリを担当することが多いです。テーピングやギプスなどの固定も任せていただけることがあります。

医師や看護師、理学療法士や作業療法士などとの連携が多いため、日常的に情報交換がしやすいことも特徴です。
整骨院勤務では機会のないレントゲンでの画像診断の場に立ち会うことが出来ることもあり、そういった環境に恵まれた職場であれば、医療者としてスキルアップを図ることも可能です。

一方で、整形外科での勤務=外傷が診られるというわけではないため、注意も必要です。求人票の読み解き方!~「思っていたのと違う!」とならないために~の中で、整形外科・クリニックで働くときの注意点を詳しく解説しているので、参考にしてみてください。

数少ない病院・整形外科求人ですが、就職する場合、収入や待遇はどうなるのでしょうか。現在の柔道整復師の給与・待遇を調べてみました。

▽複数の求人からみた柔道整復師の病院における給与・待遇例

A医院 B医院 C医院
月給 21.5万円~ 21~23万円 23.5万円~
休日 ・月10日公休
・年間休日119日
・年末年始休暇あり
・変形労働時間制
・年間休日110日
・年末年始休暇あり
・土日祝日休み
・年間休日120日以上
・GW、夏季、年末年始休暇あり
その他 ・残業月20時間程度
・交通費支給
・住宅手当
・家族手当
・残業月10時間程度
・交通費支給
・教育研修制度あり
・残業月10時間程度
・教育研修制度あり
・資格取得支援制度あり

病院の場合、治療院のようにみなし残業を想定しているところは少ないようです。その場合、月で発生した残業時間分の残業代が支給されることになります。
また、年間の休日数も多いことから、労働環境は安定していることが予想されます。月給もほぼ横並びで差がありません。

前述の通り、整形外科・クリニックで働く際は、条件よりも「きちんと求める業務内容ができるかどうか」が注意点です。しっかり見学もしてから選ぶようにしましょう。

柔道整復師の就職先3:リハビリ施設

リハビリ特化型デイサービスなど、リハビリ施設でも柔道整復師は必要とされています。
介護福祉施設では法律に基づき、機能訓練指導員を施設ごとに必ず一人以上、配置しなければなりません。
専門的な知識を持つ柔道整復師は、利用者の運動機能や生活機能の回復に務める機能訓練指導員として重宝される傾向にあります。

利用者のリハビリを担当することはもちろん、身体機能を評価し、どのような機能訓練が必要か判断したり、機能訓練計画表を作ったりすることも機能訓練指導員の役割です。
体の構造を熟知した柔道整復師の知識や経験を生かすことができます。

▽複数の求人からみた柔道整復師の介護施設における給与・待遇例

A施設 B施設 C施設
月給 23.5~27.9万円 25~30万円 20万~
休日 ・変形労働時間制
・年間休日124日
・夏季休暇あり
・完全週休二日制
・夏季・年末年始休暇
・長期休暇
・特別休暇
・土日祝日休み
・夏季・年末年始休暇
その他 ・残業月5時間程度
・交通費支給
・家族手当
・住宅手当
・資格手当
・食事手当
・夜勤手当
・財形貯蓄制度
・残業月10時間程度
・交通費支給
・資格手当
・昇給あり
・研修制度あり
・副業OK
・交通費支給
・住宅手当
・昇給あり
・治療賠償保険完備

デイサービスでは、病院同様、みなし残業を想定しているところは少ない傾向にあります。

整骨院や病院以上に、利用者様の利用時間が決まっており、残業時間が少ないため、家庭を持ちながら働く方も多くいらっしゃいます。

一方で、送迎(運転)業務も兼任が必要になる、院長などの役職がある整骨院と比べて昇給がしづらいことはデメリットとして挙げられます。

柔道整復師の就職先4:介護施設

特別養護老人ホームや老人保健施設、グループホームなどの介護施設でもリハビリ施設と同じように機能訓練指導員を配置する必要があり、こちらも柔道整復師が活躍できる場です。

施設形態によって役割や業務は変わり、介護の度合いによっては運動機能の積極的な回復を目指すよりも、日常的に必要な機能を取り戻していくことが目標とされる場合もあります。
もちろんリハビリ体制が整った施設も多く、就職を考えるときには自分にどういった役割が求められているか確認しておきましょう。

施設によっては利用者の身体介護やレクリエーション担当など、一般の介護スタッフに近い業務を任されることもあります。
実務経験を5年以上積むことでケアマネージャーの取得資格も得られるため、介護分野に幅広く携わりたいと考えている方にとって最適な職場だといえます。

柔道整復師の就職先5:訪問介護

数は多くはありませんが、訪問介護の現場でも柔道整復師は活躍できます。訪問リハビリの担当者として実際に利用者の自宅を訪れ、身体機能訓練などを行います。
リハビリ施設や介護施設と異なるのは、利用者の自宅で行うため、実際の生活シーンに即した訓練もあわせて行えるという点です。

歩行練習やトイレ、入浴、家事などの動作、外出の訓練など、日常生活に直接つながる活動へ働きかけることができます。
また、ご家族に対してより実践的な介助方法や過ごしやすい環境の整え方などのアドバイスも可能です。利用者一人ひとりの心身に合わせたリハビリを行えることは、訪問介護での大きなやりがいといえるでしょう。

柔道整復師の就職先6:プロスポーツチーム

厳密には就職ではありませんが、柔道整復師はプロスポーツチームのトレーナーとして働く道もあります。
その際は、個人事業主としてプロスポーツチームと業務委託契約を結び、そのチームスタッフとして所属する場合がほとんどです。
スポーツ選手は常にケガと隣り合わせであり、筋肉や骨格についての知識を持ち合わせている柔道整復師にとってぴったりの仕事です。

チーム付きのトレーナーとして働くために必ずしも柔道整復師の資格は必要ではありません。
しかし、体の構造に詳しく、打撲や脱臼、捻挫などを手技で治療できる柔道整復師は、普段のケアから遠征への帯同まで重宝されます。

プロスポーツチームへの就職は、門戸が広いとはいえません。また、条件も非常に良いとは言い難い状況にあります
チーム専属のトレーナーになれば、チームの大会について回るため、自分の都合で休みを取ることが難しいことも多いです。
また、個別に契約を結んで成り立っている仕事ですので、最悪の場合、契約が打ち切られれば、仕事がなくなるということもありえます。
そんな厳しい側面もありますが、それでも、前線で活躍している選手を支えることができる、夢のある仕事です。
プロスポーツ選手を相手に、スポーツトレーナーとして長く活躍することを目指すのであれば、スポーツ医学や栄養学など、柔道整復師以外の知識も身につけていきたいところです。

柔道整復師の就職先7:スポーツジム

一般の人が通うスポーツジムなどでフィットネストレーナーとして働くこともできます。
ジム利用者にトレーニングの指導を行うのが主な業務で、体力作りやダイエットなど目的に応じたプログラムの作成を行うこともあります

この場合も柔道整復師の資格は必ずしも必要ありませんが、トレーナーには体の構造などに関する正しい知識が必要です。
したがって筋肉や骨格など体に関する知識を体系的に身につけている柔道整復師はスポーツジムでも存在感を発揮できるでしょう。フィットネストレーナーに向けた民間資格を合わせて取得しておくとさらに活躍の場が広がります。

スポーツジムでは、スポーツトレーナーとしてだけでなく、ジム併設の治療院で働くケースもあります。

▽複数の求人からみた柔道整復師のスポーツジムにおける給与・待遇例

A施設 B施設 C施設
月給 20万円~+歩合給 25万円~ 22万円+歩合
休日 ・シフト制
・月6~8日休
・夏季・年末年始休暇あり
・完全週二日制
・土日祝日休み
・シフト制
・月7日休
・長期休暇可能
その他 ・残業時間不明
・交通費支給
・独立支援制度あり
・研修制度あり
・治療賠償保険あり
・残業時間不明
・勉強会あり
・開業支援制度あり
・副業OK
・施術者保険加入
・フィットネスクラブ利用優遇
・残業時間不明
・交通費支給
・昇給あり
・独立支援制度あり

スポーツジムやトレーニング施設の求人では、その他の就職先に比べて休日が少ない傾向にあるようです。
残業時間についてはいずれも不明でした。3つの施設に共通しているのは、独立開業を支援する制度があることです。

将来的にスポーツジムの設立を考えている方には、必要なことを学びながら働ける就職先となるでしょう。

柔道整復師の就職先8:リラクゼーションサロン・エステサロン

アロママッサージやタイ式マッサージ、カイロプラクティック、リフレクソロジーなどのリラクゼーションサロンでも、筋肉や骨格のスペシャリストである柔道整復師が重宝されることがあります。

マッサージなどの方法でお客様の体へ直接アプローチするため、柔道整復師の持つ筋肉や骨格についての知識やスキルを生かして、根本からのアプローチが可能です。国家資格を持つセラピストとしての付加価値をあげれば差別化も図れ、ニーズも高まるでしょう。

エステサロンにおいても、リラクゼーションサロンと同じようにお客様の体に直接触れるため、柔道整復師の知識や経験を十分に生かせます。

また、女性の柔道整復師にとって女性スタッフの多いエステサロンやリラクゼーションサロンは働きやすい職場でもあります。ライフステージに合わせた働き方が可能だったり、育児休暇などの福利厚生が充実していたり、女性が働きやすい仕組みが整っていることが多いためです。

柔道整復師の就職先9:教員

柔道整復師の養成学校で教員として教壇に立つこともできます。そのためには、5年以上実務に従事したのちに柔道整復師専科教員認定講習会を受講し、「専科教員」となる必要があります。
専科教員は専門学校や大学で柔道整復師になるために必要な教育課程だけでなく、実技も教えることが可能です。

教員の先生方の中には、教員の勉強だけするつもりで、教員になるつもりはなかった、という方もいらっしゃいます。
ご自身のスキルアップのために講習会を受講したけれども、ご縁があって教員として働くうちに、学生の指導に熱が入っていった、という話をしばしば伺います。

教員も、未来の柔道整復師を育てる素晴らしい仕事です。興味がある方は、母校の先生方に話を聞いてみるのも良いでしょう。

柔道整復師の就職先10:経験を積んだ後には独立開業という選択肢も

柔道整復師には医師などと同じように独立開業権が認められています。柔道整復師の資格取得後に2~3年の実務経験を経た後、柔道整復師施術管理者の研修を受講することで独立開業できます。

ただし、独立資金の準備や、開業後は経営手腕も必要になるため、数年ほどの実務経験で開業するのはハイリスクといえます。まずは治療院の現場で柔道整復師として経験を積むのがよいでしょう。
グループ院であれば、院長やエリアマネージャなどの経営感覚を養えるポジションを経験してから独立するのも手です。グループ院によっては、フランチャイズ展開・独立支援などの制度を設けているところもあります。

給与が高い職場は?

厚生労働省の職業情報提供サイト(日本版O-NET)によると、柔道整復師全体の平均年収は426万4,000円です。
患者様からの指名が入るなどによる歩合制を採用している院であれば、実力次第で収入を増やすことが可能でしょう。

また、独立開業し、経営を軌道に乗せることができれば、さらなる年収アップも期待できます。ニーズに応じた施術や、確かなスキルなど求められることは多いものの、多くの患者様の信頼を得られれば、年収1,000万円を目指すことも夢ではないかもしれません。

ワークライフバランスを整えやすい職場は?

整骨院や接骨院の営業時間は9:00~20:00までなど長い場合が多く、開店前準備や閉店後の業務も含めると拘束時間も長くなりやすい特徴があります。
一方で整形外科・クリニック、リハビリ施設・介護施設は、院にくらべると拘束時間が短いため、比較的ワークライフバランスが整えやすいといえるでしょう。

ただし、近年整骨院でも働きやすい勤務時間の院が増えてきています。早番・遅番制度や、週休3日制などを取り入れている院もあるので、面接の際に実働時間について確認するようにしましょう。

まとめ:柔道整復師の就職先はさまざま!自分にぴったりの職場を見つけよう

柔道整復師の就職先は整骨院や接骨院だけにとどまりません。介護やスポーツ、美容など多岐にわたり、それぞれに特徴があります。
また、実務経験を積み、経営者として独立開業することも可能なのは柔道整復師の特長でもあります。

どんな施術がしたいのか、どのように働き、キャリアアップしたいのかなどをしっかり洗い出し、自分にあった職場を見つけましょう。

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