【治療家のためのキャリアの作り方】たった1本の細い針金で人生を変えられる|船水隆広
キャリア・働き方
鍼灸師
はじめに|治療家のためのキャリアの作り方
卒業したらどんな道があるか?各分野で活躍する先生にインタビューしました!
これからどんな治療家を志し、どんなキャリアを描いていくのか”わくわく・どきどき”しつつも、「不安」の方が先立っている学生の方も多いかもしれません。
治療家のキャリアは様々です。
どんな選択肢があるのか悩んでいる学生の方々に向けて、各分野で活躍している先生にインタビューしています。
ぜひ、今後のキャリア形成に活かしてみてください!
船水隆広(ふなみず・たかひろ)先生
学生時代はどうだったのか
特に何もしていないですね。学生時代はひたすら鍼灸に絶望していました。
誰がよい先生かもわからないし、学生同士で鍼をしても劇的な効果もないしで、がっかりする日々でした。今思えば、刺しているだけで治療をしてないので、効かないのは当たり前なんですけどね。
当時は学校の授業も西洋医学一辺倒だったので、ますます東洋医学の価値が判りませんでした。3年間で学会に行ったこともありません。何の興味もありませんでしたから。
アルバイトでマッサージをやっていたくらいで、腐った魚のような目をしたまま卒業しました……。今こうして教員として教えていることについて、当時の同級生から「東洋医学に何の興味もなかったのに!」と驚かれるくらいです。
アグレッシブさとは想像もつかない学生時代
学生時代を無駄にした後悔がパワーになっているのかもしれませんね。
僕は何もしなかった分、卒業してから苦労しました。免許を取ったところで、何もできないわけですからね。だからこそ、何かを求めて、教員養成科に進むことになります。
当時はSNSもないので、とにかく情報がないなかで、自分なりにもがいていました。そんな自身の後悔から、今は教員の立場として、学生にいろいろなアドバイスしています。やっぱり先に動いたほうが勝ちですからね。
学生時代にすべきこと
僕が最初に学生に言うことは「3年間で50の治療院を体験しろ」ということ。それも治療を受けて「ああ、よかった」と満足するのではなくて、自分のなかで、その治療院の良かった点と悪かった点をメモするように伝えています。
50枚のメモができれば、もう統計ですよね。自分はどんな鍼灸師になって、どんなスタイルで開業したいのかが、そのメモから必ず見えてくるはずです。そのときに大切なのが、予約の段階で「学生で鍼灸を学んでいます」と伝えておくこと。そうすると、みんな親切にしてくれるので、縁にもつながりやすくなります。
学生だと治療費の面では大変かもしれませんが、自腹を切らないとシビアな評価につながりません。先行投資だと思って、ぜひこれはやってほしいですね。
早めの先行投資を
3年生になってからでは遅いですね。1年生からいろんな治療を受けて、視野を広げることが大切です。治療を受ける以外にも、学会や勉強会も「いいな」と少しでも思ったら、できるだけ早く足を運ぶこと。学生時代は参加費も安いです。
また、企業相談会のようなものも、1年生のうちから必ず出るように伝えています。今のトレンドを知ることも大切ですから。ラーメンだって食べた味しかわからないじゃないですか。実際に味わって初めて、ラーメンの多様性を実感するわけで、鍼灸も早い時期に世界を広げておくことが重要です。
「美容がやりたい」と思って入学してきた学生が、卒業する頃には介護の分野に進んで「自分でも思いもよりませんでした」というようなことは、よくあります。
鍼灸師という仕事のやりがい
鍼灸師は「人につく仕事」なんですよね。自分の治療を受けるために、北海道や沖縄、海外から来てくれる人もいる。こんなにやりがいのある仕事はないですよね。
たった1本の細い針金で、人の人生を変えることができる。そんな体験をすれば、もうこの仕事以外はできないんじゃないでしょうか。学生時代の自分にも、そんなふうに教えてあげたいですね(笑)。