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【インパクトシリーズの原田先生解説】国試の勉強、どうしたらいい?「参考書選び」から「記憶法」、色々な悩みに答えます。

治療家学生の皆さんこんにちは!
本日はインパクトシリーズなどの著者で、お茶の水はりきゅう専門学校の副校長でもある原田先生に国家試験の勉強方法についてお話を伺いました。
国家試験に向けての勉強において、参考になれば幸いです。

1.戦略を立てる

①どの教科から手を付けるか

鍼灸師の国家試験の場合、十数教科の問題が出題されます。
どの教科から始めるのが正解なのでしょうか?人によって状況が異なりますので、正解はありませんが、基本的には「解剖学」「生理学」「東洋医学概論」「経絡経穴概論」といった専門基礎科目から始めるのが合理的ではないかと思います。何故ならばこれらの基礎的な教科がある程度理解できていないと、「臨床医学各論」、「臨床医学総論」、「病理学概論」、「東洋医学臨床論」といった応用科目の理解に苦労し、大きな時間のロスに繋がるからです。

②相手を知る

「ある目的を達成するための勉強」を始める際に、絶対にやってはいけない事。それは「やみくもに勉強を始める」という事です。中国の有名な故事に「彼を知り己を知れば百戦殆(あや)うからず」というものがあります。戦う相手(国家試験)がどの様なものかも分からないまま戦い(勉強)を挑むのは大変危険です。

まずは、戦うべき相手である国家試験の問題を徹底的に分析しましょう。
では、具体的にどうしたら良いのでしょうか?それは、国家試験過去問集や黒本などを使い、教科ごとに、過去の国家試験にはどの様な問題が出題されているのかをチェックするのです。過去問集は問題を解く練習に使うだけではなく、国家試験の出題傾向の分析にも使いましょう!

2.勉強の仕方

①重要なキーワードを抽出していく


基本的に学校の授業で配布されるプリントや資料は、学校の先生によって分析され、国家試験合格に必要なキーワードが教科書などから抽出されていると思います。ですから皆さんのお手元にそのようなプリントや資料があれば、この作業は省略しても構いません。ですが、運悪くそういったものがない場合は自力でやるしかありません。

教科書と過去問集を見比べながら、過去問が教科書のどの部分から出題されているのかをマーカーなどで印をつけていき、そのキーワードを含むセンテンスをノートにまとめていきます。こうして教科書中のキーワードだけを抽出したノートを作っていきます。

②記憶方法に関して その1

①でご説明した、キーワードノートが完成したら、ここからはそれらを覚える作業に移ります。恐らく多くの人はこの作業に最も苦しむのではないかと想像します。
私自身も決して記憶力は良い方ではなかったので学生時代は大変苦労したのを覚えています。私は現在鍼灸学校の教員を15年勤めていますので、数えきれないほどの学生さんから、「覚え方が分からない!」とか「覚えるコツはありますか?」とか「覚えてもすぐに忘れてしまいます。どうすればいいですか?」というような質問をされてきました。

よく議論されるのが、「書いて覚える」のがいいのか?それとも「読んで覚える」いいのか?という事です。

結論から言うと、長年の失敗と成功を繰り返した結果、私は「読んで覚える」をお勧めします。
人間の脳は大事なものは覚えるが、大事じゃないものはすぐ忘れるようにできています。「エビングハウスの忘却曲線」によると、例えば100個の単語を覚えたら、1時間後には44個、1日後には34個、1か月後にはなんと21個まで記憶していられる単語が減ってしまうそうです。

では、せっかく覚えた単語をなるべく忘れずに覚えておく方法はないのでしょうか?先程、少し触れましたが、人間の脳は大事なものは覚える(記憶に留める)が、大事じゃないものは忘れる(記憶から抹消する)という性質があります。この時、脳が大事なものか大事なものでないか判断するのにはあるパターンがあります。
それは「何度も何度も」その単語に出会うという事です。ですから同じ単語にできるだけ出会うためには、時間をかけて3回も紙に書くよりも、紙に書く時間を節約して10回読んだ方がその単語に出会う機会が増えるというわけです。

私自身、現在訳あって、英単語を覚えなければならない事情があり、この方法(読んで覚える)を実践しています。実際、中年期真っ盛りの私ですが、割と効率よく英単語を覚えられていると思っています。尚、読んでも読んでもどうしても覚えられないものに関しては「書いて覚え」るのもありだと思います。

単語やセンテンスを覚えるとき、書いて、更に声に出して読むと、五感(味覚・嗅覚は除く)が総動員され記憶の定着率は上がります。但し、繰り返しになりますが、この方法はどうしても時間がかかってしまいますので、どうしても覚えられない時にのみ使うと良いかもしれません。

③記憶方法に関して その2

さて、頭では何度も何度も繰り返し読んだり書いたりすれば記憶として定着するのは分かっていても、勉強というのは往々にして退屈でつまらないものです。すると②の覚える作業が苦痛になり始め、単語の字面を目で追いながらも、頭では他の事を考えだしたりして全く単語が頭に入って行かないという事態に陥ってしまいます。だって楽しくないのですから(笑)、それはとても自然な事とも言えるでしょう。

では、そんな時はどうしたら良いのでしょうか?これは私自身が学生時代実際に行っていたことなのですが、「つまらないな~」と思い始めたら、つまらない単語やセンテンスを読みながら、わざと「なるほど~、そういう事か~、おもしろ~い」と言いながら覚えていました。
高杉晋作先生の「おもしろき こともなき世(勉強)を おもしろく」の精神です(笑)。すると不思議な事に我が単純な脳みそは「これは面白くて記憶に留めるべきものだ」と勝手に勘違いをしてくれ、つまらない単語やセンテンスが頭に入っていきました。まぁ、限界はありましたけど…。

④記憶方法に関して その3

最後に記憶方法に関して、受験生の強力なアイテムになってくれる「語呂合わせ」と「イラスト」についてお話したいと思います。生理学や臨床医学各論、東洋医学概論など、いわゆる「理解教科」の場合、覚える内容がストーリーになっている場合が多く、比較的記憶に残りやすいと思います。一方、経絡経穴概論や解剖学、例えば、解剖学でいえば手根骨の並び順、経絡経穴概論でいえば経穴の横並びなどには理屈などありません。
「そうだからそう」なのです。そんな取り付く島もないキーワードを力ずくで覚えるのに強い味方になってくれるのが前述した「語呂合わせ」です。「語呂合わせ」を紹介する書籍もたくさん販売されていますし、インターネットで検索するとたくさんの「語呂合わせ」がヒットします。「語呂合わせ」の優れた点は一遍にたくさんのキーワードを覚えることが出来、元々意味のないキーワードの羅列や集まりに意味を持たせてくれる(もちろん学術的な意味ではありませんが…)ので記憶に定着し易く、とても便利です。

私自身も国家試験合格後15年以上経過していますが、経穴の横並びの「語呂合わせ」は未だに覚えており、実際の治療の際でも利用しています。ただ、一つ注意しなくてはならないのは「語呂合わせ」が便利だからと言って「語呂合わせ」に頼りすぎ、多用すると、「語呂合わせ」の文言は覚えているけど、その「語呂合わせ」が何の「語呂合わせ」だか分からなくなってしまいますので、「語呂合わせ」は、何回読んでも書いても、どうしても覚えらそうにない様なものだけに留め、上手に利用しましょう。

そして、もう一つ。「語呂合わせ」以上に強力なアイテムとして「イラスト」があります。人間の五感による知覚の割合は凡そ80%と言われています。ですからこの「イラスト」を利用しない手はありません。例えば、この様な情報を覚えなくてはならなかったとします。

  • 胃の入り口は噴門、出口は幽門である。
  • 胃の天井は胃底である。
  • 胃の外側の大きな湾曲を大湾、内側の湾曲を小弯という。
  • 小弯の一部の深い切れ込みを角切痕という。
  • 幽門には幽門括約筋がある。

文字だけでこれだけの情報を覚えようとすると大変そうですよね(笑)。そこで、「イラスト」の登場です。教科書のイラスト、参考書のイラスト、インターネットにアップされているイラスト、これらをコピーして自分のノートに張り付けるというのもいいでしょう。でももっといいのが、自分でイラストを描くことです。「俺/私は絵心なんかないからそんなの無理!」なんて声が聞こえて来そうですが、ご安心ください。「イラスト」精度なんてどうでもいいんです。線が引けて、丸や三角、四角が描ければ十分です。例えば上記の情報を「イラスト」化するとこんな感じになります。

どうでしょうか?こんな感じでも十分です。自分で「イラスト」を描くといいことがたくさんあります。まず、イラストを描く事で覚えなければならない内容が嫌でも頭に入ってきます。そして何より情報量が文字情報に比べてかなり圧縮されます。ある場所へのルートを人に伝えるときに簡単な地図を書いて説明するのと同じ理屈です。

参考書の選び方

これも学生さんからよく受ける質問の一つです。正直に言って、参考書の合う合わないは、学習者の学力や好みによってまちまちだと思います。ですから、学生さんからこのような質問を受けた場合、私は以下のようにお答えしています。まず、自分が知りたいキーワードを2,3個準備してから本屋さんに行き、それらの説明がされているであろう参考書を複数ピックアップします。そして自分が知りたいキーワードについて説明してある箇所を読み比べてみて、もっとも腑に落ちる説明の仕方がされている参考書を選ぶといいよ、と。私自身も参考書を選ぶときこの方法で自分に合ったものを見つけています。

因みに前述したように参考書の合う合わないは人によって異なると思っているので、インターネットのレビューは参考程度にしています。

3.モチベーションの保ち方

①やる気スイッチ

基本的に人間、というか動物は、食べる、寝る、戦う、逃げる以外の事になるべくエネルギー消費を避けるように出来ています。ですから一部の知的好奇心を満たすことが好きで好きでたまらない人以外は、私を含め皆、勉強が嫌いなはずです。でも、国家試験に合格するためにはそんな事は言っていられません。そう思って、やらなきゃやらなきゃと思いつつも、なかなか机に向かえない…(笑)。

ではどうしたら良いのでしょうか?その答えは、やる気が出なくても、嫌々でも、ノートを開き「取り敢えず始める」事なんです。すると不思議なことに5分くらい経ってくると自動的に「やる気スイッチ」が入り、やる気が湧いてきます。これは科学的にも証明されており、「作業興奮」と呼ばれています。ちょっと詳しく書くと、嫌々でもノートを開き、声を出したり、手を動かすと、脳の側坐核という部分が興奮し、ドーパミンというやる気を出させる物質が分泌され、やる気の向上をもたらすと考えられています。私自身も面倒だけど、どうしてもやらなければならない事があるときは、覚悟を決め、この「作業興奮」を利用して頑張っています。

②環境を変えてみる

自宅で勉強していると、どうしても色々な誘惑に負けそうになります。テレビ、漫画、インターネット…。そしてふかふかのお布団!それらは強靭な意思をもってしても抗うのは非常に困難です。
そんな学生さんにお勧めなのは喫茶店に行く事です。

何故、喫茶店がいいのか?まず、上記の誘惑から隔絶される(スマホはカバンの中に封印しておきましょう)。そして周りに他人がいっぱいいるからちゃんと勉強しているとカッコいいし、逆に遊んでるとカッコ悪い(笑)。また、少なくとも飲み物代として少なからずお金を払っているので、何もしないで帰るのはもったいないという心理が働く。そしてなにより、疲れても寝転がれない(笑)。

ただし、大きな声でお話をしているお客さんの隣の席にならないように注意しましょう。

4.最後に

最後に大事な事をお話してこの記事をまとめたいと思います。
私が15年の教員生活で勉強が苦手な学生さんから、「ちゃんと勉強してるのにテストが出来ません」というセリフを何度となく聞いてきました。何故、一生懸命勉強しているのに結果が出ないのでしょうか?私は不思議に思い、その学生さんから詳しくお話を聞いてみました。
すると、その学生さんは試験に出そうな重要なキーワードに赤のマーカーで線を引き、同じく赤の透明シートで隠して「勉強していた」と言います。
ところが、実際にその重要なキーワードを覚えているか、私が質問してみたところ、その学生さんは10%程しか覚えていませんでした。要は、本人は勉強したつもりになっているのでしょうが、ちょっと厳しい言い方になってしまいますが、これでは「ちゃんと勉強をした」とは言えません。

勉強が苦手な学生さんの場合、実はこういうケースが多いです。単純に勉強時間(机に座っている時間ではなく)が不足しているのです。また、成績の良いクラスメイトと比べて、「僕/私は頭が悪いから、なかなか覚えられない」という学生さんもいらっしゃいますが、成績の良い人は必ず時間をかけて勉強しています。また、効率よく勉強しているように見えるのは、地道な努力の積み重ねがあるから、ゼロから覚えなければならない人よりも、新しく覚えなくてはならないことが少ないためなのです。国家試験の勉強は覚える事が多くて大変かもしれません。でも頑張って合格した時の達成感、充実感は何ものにも代えがたいものとなるはずです。

勉強の結果はすぐに出るものではありませんが、必ず努力は報われます。今は本当に苦しくて辛いと思いますが、夢を抱いて鍼灸学校に入学したあの時の気持ちを思い出して頑張ってください!

原田晃

記事を書いた人

原田晃

都築学園 お茶の水はりきゅう専門学校 副校長

はり師・きゅう師
はり師・きゅう師養成学校教員資格
日本薬科大学「BP漢方アロマコース」講師
2007年より15年以上、鍼灸師養成学校で教壇に立つ。
著書:マッスルインパクト経穴インパクト生理学インパクトなど
YouTube: Impact Channel

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