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東洋医学と西洋医学はなにが違う?治療家として覚えておきたい基礎知識

医学には大きく分けて東洋医学と西洋医学の2つがあります。東洋医学と西洋医学の違いについて、なんとなく知っているものの、うまく言語化できていない人は多いのではないでしょうか。改めて歴史的背景や資格の違い、治療内容の違いなど基本を解説します。

東洋医学・西洋医学のそれぞれの定義は?

東洋医学は、古代中国医学を源流とする東アジア地域で用いられている伝統的な医学のことです。東洋医学は約2000年の歴史を持つ医学で、中国・インドの宗教や哲学的思想を根底として「体の不調を内側から治療する」「病気を予防する」ことを目指します。東洋医学は内科的診療が主となっており、鍼灸・手技・漢方などで時間をかけて症状を改善します。

西洋医学は、古代ギリシャや古代ローマで発達した対症療法を中心とした医学です。一般的な病院やクリニックにて、先進技術・機器を用いた診察や治療を行っているのが西洋医学にあたります。内科的治療だけでなく、外科的アプローチから即効性のある処方・治療を優先します。

 

東洋医学と西洋医学の違いを解説

東洋医学と西洋医学の違いについて、さらに詳しく見ていきましょう。

東洋医学・西洋医学の成り立ち

東洋医学と西洋医学は成り立ちと発展のしかたに違いがあります。

東洋医学は、約2000年前に中国で生まれた医学をもとに、その後日本や韓国に伝わり発達しました。これらの地域の文化や気候風土、生活習慣をもとに発達したため、独自の医学を確立しています。

東洋医学が日本に伝わったのは、西暦600年頃で、江戸時代末期には伝統医学に対する研究が最盛期を迎え、明治時代以降には日本の東洋医学が中国に逆輸入されたといいます。このように、東アジア地域それぞれで独自の発達を遂げながら綿々と受け継がれているのが東洋医学です。

西洋医学は、古代ギリシャや古代ローマの思想を根底とした医学で、病気を悪として徹底的に取り除きます。日本に西洋医学が伝わったのは、ザビエルが渡来した1549年のことです。この時、キリスト教布教の手段として西洋医術を用いたと伝えられています。

その後、1600年代にはオランダから、1800年代にはドイツから西洋医学が伝わり、日本でも西洋医学をもとにした診療・治療が行われるようになりました。

東洋医学・西洋医学それぞれの特徴

東洋医学と西洋医学は、その思想と成り立ちの違いから異なる特徴を持ちます。

東洋医学では、病名に対して決められている治療を行うのではなく、「患者さんが訴える自覚症状や患者さん自身に合った治療法」を探り、実行するのが特徴です。

また東洋医学では、体調不良が起こっている原因を痛みや不調がある一部分にクローズアップして考えるのではなく、体全体の問題として年齢や体形、体温、栄養バランスなどの状態を加味して診察します。

「どのようにしてバランスが崩れているのか」を診察で判断し、元の状態に戻すためには何をすればよいのか考え、治療を行うのが特徴です。東洋医学では、体調不良を抱えている本人の自然治癒力を引き出し、体の不調を根本から整えようとします。

東洋医学には「未病(みびょう)」という考え方があります。未病とは、「病院に行くほど強くはないが、自覚症状がある体調不良」のようなものです。がんや胃潰瘍のように明確な病名があるわけではなく、体に何らかの異常を感じている状態を指します。

たとえば、胃もたれや肩こり、疲労、イライラも未病の一つです。これら未病に対してもアプローチして、病気を予防できるのが東洋医学なのです。

このように東洋医学は、1つの病気に対してすでに決まっている治療法を実施するのではなく、一人ひとりの症状や体形、年齢などに応じた治療を行うのが特徴です。

西洋医学では、採血による血液検査、CTやレントゲン検査などで体のどの部分に不調があるのかを探ります。検査によって特定の臓器で起こっている変化を発見したのち、薬や手術で不調の原因に直接アプローチします。

科学的根拠に基づいた診断・治療を行う西洋医学は、「病名がはっきりしない体調不良」への対応が難しいという特徴を持ちます。

東洋医学と西洋医学それぞれの強みと弱み

強み 弱み
東洋医学 ・自然治癒力を引き出すことで病気を根本的に治そうとする
・病名がはっきりしない体調不良にも対応できる
・体質や生活習慣に合わせた治療を行う
・自律神経や内分泌系に関する機能異常が得意
・治療期間が長い
・強力なウイルスや細菌・毒にはアプローチしにくい
・がんや骨折など、手術が必要なものにはアプローチしにくい
西洋医学 ・対症療法で即効性のある治療を行える
・薬や手術で不調をすぐに改善できる
・伝染病や手術が必要な病気・ケガの治療に強い
・科学的な根拠に基づいた診療・治療を行う
・先進的な技術を用いた高精度な診断・治療が可能
・病名がはっきりしない体調不良には効果的な治療を行いづらい
・薬の処方が主な治療手段となり副作用による影響が懸念される
・体のパーツごとに専門が設けられており横断的な診療・治療が難しい

治療方法の違い

東洋医学と西洋医学の治療方法の違いについて、あらためて見ていきましょう。

東洋医学と西洋医学の治療方法の違い

主な治療方法
東洋医学 ・鍼灸
・手技
・漢方薬
西洋医学 ・薬物療法
・手術による切除など

東洋医学では、鍼灸、手技(あん摩)、漢方薬などを用いて治療を行います。東洋医学では外科的な治療は行いません。これを「非観血的療法」といいます。処方される漢方薬は、自然にあるものを原料とする生薬で、症状に対する効き目が緩やかで副作用が少ないという特徴を持ちます。

西洋医学では、薬物療法や手術による切除などを主とした治療を行います。治療に使われる薬は複数の成分を合成して人工的に作られているものが多く、症状に対してすぐに効果をあらわしますが、副作用を伴うことが多々あります。

資格の違い

東洋医学と西洋医学、それぞれを用いて治療を行うためには国が定めた資格を取得する必要があります。

東洋医学を用いた治療家として活躍したい方は、次の東洋医学系国家資格を取得しましょう。

  • 鍼灸師
  • 柔道整復師
  • あん摩マッサージ指圧師

西洋医学を学び、医師として活躍したい方は医師国家試験を受験し、医師免許を取得します。また、東洋医学のなかでも漢方薬を用いた治療を行いたい場合は、西洋医学と同じく医師免許を取得する必要があります。

東洋医学とされるものは3つある

東洋医学とされるものには次の3つがあります。鍼灸治療、手技治療、漢方治療とはどのようなものなのか詳しく解説します。

鍼灸治療

鍼灸治療とは、鍼(はり)と(きゅう)を用いて、病気の予防や症状の改善に取り組む治療のことです。慢性的な痛みや原因不明な体調不良、病気の予防にも効果があるとされています。神経系の疾患や循環器系疾患、運動器疾患、消化器系疾患などにたいして有効性が認められています。

  • 鍼について
    鍼治療は、症状に応じて2,000以上のツボ(経穴)を刺激し、体のバランスを内側から整えようとするのが特徴です。治療に使われるのは直径0.12~0.18mm程度のステンレス製の針です。針をツボに刺入する方法には、筒に針を入れる管鍼法と、筒を使わず親指と人差し指で鍼をつまみ刺入方法の2つがあります。

どちらも痛みはほとんどありません。鍼を刺した後は、上下に動かしたり、回したり、振動させたりしてすぐに抜くか、10~15分程度放置しておきます。

  • 灸について
    ヨモギの葉を乾燥させ葉の裏側だけ集めた「もぐさ」を皮膚の上に置き、火をつけてツボに熱刺激を与えるのが灸です。お灸ややいととも呼ばれます。灸には、もぐさを直接皮膚に置く直接灸と、皮膚と灸の間を少し開けて行う間接灸があります。

また、刺入した鍼の先にもぐさを取り付けて点火する治療法や、遠赤外線、レーザー光線を使った科学的な方法もあります。

手技治療

手技治療は、手を用いて体表やツボを刺激し体のバランスを整える治療法です。手技治療を行うのは、柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師です。柔道整復師の資格所有者は、整骨院や接骨院にて骨折、脱臼、捻挫、打撲などの損傷を手技で治療します。

あん摩マッサージは、手指で体を推したり揉んだりして病気の予防や体のこりを軽減します。指圧は揉んだりたたいたりせず、手指や手掌で体表に圧を加えるのが特徴です。あん摩マッサージ指圧師は、これらの手技を用いて治療を行います。

漢方薬治療

漢方薬治療は、漢方薬を用いて行う治療のことです。現在、日本で処方されている漢方薬は、西洋医学の薬と同様に医師免許を持つ医師しか処方できません。漢方薬は、東洋医学の長い歴史の中で、生薬の種類や量、または組み合わせを工夫して「薬」として確立されているものです。なかには、日本独自の漢方薬も存在しています。

漢方薬のもととなるのは、「生薬」と呼ばれる草の根や葉、木、動物、鉱物など自然に存在しているものです。自然にあるものを組み合わせて処方して、体のなかからバランスを整えます。

漢方薬は西洋医学で用いられている人工的に化学合成された薬に比べて即効性はありません。しかし、長く飲み続けることで症状を根本から改善していきます。副作用も少なく、また、多種多様な生薬を患者さんに合わせてブレンドすることで、一人ひとりの症状に合った漢方薬を処方できるのも特徴です。

東洋医学は中国古来より今に続く伝統的な医学

東洋医学と西洋医学では、思想も治療法も異なります。もっとも大きな違いは、「手術の有無」でしょう。東洋医学は手術を行わない「非観血的療法」を用いて治療を展開します。

同じ東洋医学でも、鍼灸師、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師が行う施術の内容には違いがある点に注意しましょう。また、東洋医学系の国家資格を有していても、医師免許を持たずに漢方薬の処方は行えません。

これから資格を取得しようと考えている方は、「どのような方法で患者さんの治療を行いたいか」「そのために必要な資格はどれなのか」を見極めつつ、多くの人に役立つ治療家を目指しましょう。

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