柔道整復師はやめたほうがいい?柔整師を目指すときに知るべきこととは
業界動向・知識
柔道整復師
方方でなぜ柔整師を目指すことをやめるよう言われてしまうのか。それは柔整師の仕事が持つ負の面が際立っているからでしょう。
今回は柔整師である筆者が、実際の現場の様子を交えながらなぜ「柔整師はやめたほうがいい」といわれてしまうのかと、これから柔整師を目指す方に知っておいて欲しいことを解説します。
柔道整復師はやめたほうが良いといわれる理由は?進路決定前に知るべきこと
柔整師は、医療系資格の中では珍しく独立開業権を持った国家資格ですが、就職するにも開業するにも、昨今の柔整師を取り巻く環境は厳しいものとなっています。
まずは、厳しいと言われる理由について見ていきましょう。
柔道整復師業界の厳しい現状とその対策
平性10年の福岡地裁による判決以降、柔整師の養成学校は激増しており厚生労働省によると平成10年の時点で全国に14校だった養成学校が、平成27年には109校まで増えたと報告しています。
柔整師の数も平成22年の時点では5万人であったのが10年後の令和2年には7.5万人、施術所の数も平成22年に3.8万箇所から令和2年には5万箇所も増加しており、それに合わせてあん摩、鍼灸、その他の類似業態の増加も報告されています。
つまり人口減少の進む日本で療術業の市場バランスは、需要(患者)に対して供給(柔整師)過多です。
しかし就職という観点から見た場合、そこまで悪化しているとは言い切れません。施術所自体も増加していることに加え、地域包括ケアシステムの構築で介護業界において柔整師は、機能訓練指導員として期待されています。
言い換えるならば高齢社会で活躍する人材となりうる可能性が秘められているともいえるでしょう。
収入と経済的な問題点
厚生省の令和3年賃金構造基本統計調査によると、医療・福祉の全年齢の平均年収は348万円です。そのうち柔整師は勤務年数が0年で年収は約256万円、20年の勤務で約490万円とあります。
一見すると悪くない年収に見えますが、医療・福祉業界の年収は日本の平均年収を下回っておりその中央値付近の柔整師の年収は低いということです。
開業で年収も増加しそうですが、多額の開業資金と運転資金が必要な上に公益社団法人日本柔道整復師会によると、施術所の約半分である45.8%の年収は500万円以下であったと報告しています。以上のことからも、決して収入に期待できる仕事とは言えません。
待遇面だと個人の接骨院の場合は従業員数が少ないこともあり、社会保険に加入していないところも多く、実際に筆者も以前務めている所は未加入でした。国保と社保では受けられるサービスも、老後の年金にも差が出てきます。先々まで含めて総合的に考えるべきです。
一方で開業のためにそこでしか学べない技術や考え方を知りたいなどの場合は仕方のない側面でもあります。ゴールを明確に定めることで、そこでの学びに充てられる時間が明確になります。時間に制限を設けることでだらだらと望ましくない環境で働くことを避けることが出来るでしょう。
柔道整復師の仕事とワークライフバランス
柔整師の仕事が「長時間労働になりがちだ」ということについて考えます。筆者が務めていた接骨院は営業時間が8時から18時半の年中無休、早出は7時から18時、遅出は9時から20時のシフト制で不定休でした。
1日出勤の日は13時間労働(休憩時間込み)の長丁場です。そして仕事終わりの自主的な勉強会も多く、帰りが23時を過ぎることもザラでした。
他の接骨院も同様に長時間労働が多い印象です。
知人の院長などの施設管理者は、ほぼ一日出勤な上に休日も呼び出しが多いらしく家族との時間を確保するのが大変と言います。
特に家庭をもつ人にとっては家族の協力もこの仕事を継続する上では大切です。
ただ近年ではこの長時間労働に対処すべく働き方改革を推進し、柔道整復師が働きやすい環境(週休3日であったり、時短労働であったり)を提供している企業もあります。
自分のライフスタイルに合う就職先を探すのも重要です。
デメリットに負けない柔道整復師の魅力
柔整師の抱える負の要素は確かにありますが、それに負けない魅力がこの仕事にはあります。
柔道整復師として得られるスキルと経験
柔整師は、解剖学、生理学、運動学などの身体の基礎構造と一般臨床医学、外科学などの西洋医学的知識と日本古来から伝わる柔道整復学を修めた、いわば外傷性が明らかな損傷(骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷)に対して、徒手整復・固定法を施すスペシャリストです。
さらに、一般社団法人運動器科学会の運動器リハビリテーションセラピスト研修で「みなしPT」の資格を得ることや、公益社団法人全国病院理学療法協会の運動療法機能訓練技能講習会を修了することで、医師の指示のもとリハビリの分野にも進出できます。
介護分野では日本機能訓練指導協会の研修会を修了すると機能訓練指導員として、介護福祉の世界でも重宝されます。
また、様々な立場や年齢層の方と接することで身につく人間力も柔整師の大きな強みです。
トレーナーや指導者としてスポーツ業界に携われる
外傷やリハビリへの技術は、スポーツ業界にも活躍の場があります。
選手の体作りからメンタル指導などの他にケアができることは、他のトレーナーとの差別化になります。様々な民間資格はありますが治療行為ができません。
例えば、大会等のスポーツの現場で選手が受傷した場合に診察して自らで応急処置ができるのは、医師か柔整師だけです。また受傷後の後療法も運動療法や物理療法など医療行為が行えるのは、医療系国家資格の強みです。この様に、柔整師だからこそできる事があるのです。
柔道整復師ならではの起業チャンス
柔整師の持つ大きな武器が開業権です。半数近くは年収500万円を割ると挙げましたが、逆をいえば、もう半数は500万円以上の年収が期待できます。1000万円以下が32.3%、1500万円以下が13.1%ということで施術所の10件に1件以上は1000万円以上の売上です。
これを多いと思うか少ないと思うかはその人次第ですが、自分の院を持つということはあなたの理想とした施術ができるということです。ロマンでご飯が食べられる訳ではありませんが、人生一度きり一国の主になれるのは魅力です。
これから柔道整復師を目指す方へ
柔整師を目指す場合、将来設計が重要です。無計画なまま務めると、平均以下の年収で公的医療保険も年金も公的年金のみで企業年金などの積立があるかどうかは勤め先の施術所次第で、目指す治療家像もあやふやになりがちなため、技術向上も期待できません。
柔整師は他の職業と違い、起業家マインドが求められると筆者は感じます。どこかに所属したとしても、常に進むべき道は自らで定めてそれを邁進していくことが仕事の成果と糧になると考えます。
柔道整復師をやめて別の職業に転職もできる
柔整師は特化した資格のため潰しが効かない印象ですが、そうでもありません。第一に、大学で資格を取得した方は「大卒」の肩書があるため働き口は広いです。異業種でも通用します。
専門卒の方も問題ありません。柔整師の仕事はある意味「接客業」です。
私自身、実際に柔道整復師として培われた人間力で、他業種でも勤務しています。
柔整師になったら一生柔整師ではありません。資格は所詮資格であって、全ては使いようです。
まとめ
柔整師を取り巻く環境は決して明るいとは言えません。収入面も待遇面も他業種に比べると良いわけではなく、その上長時間労働になりがちなため家庭とのバランスが難しいです。しかし、柔整師の数が多いことからもこの仕事に魅力を感じる方も多いのです。
医療分野、スポーツ分野、介護分野の方面から人々の笑顔と健康を守れるという喜びと達成感は、他の業種では得られません。また、開業の夢も叶えられます。
資格自体の不自由さも、本人の頑張り次第で解消されます。
結論、柔整師は言うほど悪い仕事ではないということです。