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柔道整復師のための副業ガイド~チャンスを掴むための実践ステップ~

近年、働き方改革はさまざまな業界で行われており、多くのメディアで話題となっています。その中で、副業や兼業に多くの注目が集まり柔道整復師にとっても他人事ではありません。

厚生労働省が出している令和4年度雇用均等基本調査によると、この調査から多様な正社員制度を導入する企業は前年度に対して上昇転じたているところを見ると、企業も副業を受け入れる流れが高まっているものと思われます。

一方で、コロナのパンデミックによりテレワーク導入を進めた企業もその働き方に馴染めず、コロナ禍が明け元の会社勤務に戻り短時間正社員の利用割合は前年度を下回りましたが、決して副業の注目度が低下したわけでもなく柔整師の間でも副業を検討している方はも増えているでしょう。

その背景には「収入を増やしたいから」、「1つの仕事だけでは収入が少なすぎて、生活自体ができないから」といった理由があります。

厚生労働省が令和2年に公開した第132回労働政策審議会安全衛生分科会の資料によると、副業している人の割合は9.7%であるのに対し、医療職は9.9%と平均よりやや高い数字であることからも柔整師の収入への不満は少なくはないことが予想できます。

副業は収入増加、将来へのリスクヘッジ以外にも心身の健康や、新たな技術習得のチャンスでもあります。この記事では、意欲的な柔整師にこれからの副業の始め方を解説します。

柔道整復師の副業に求められるもの

柔整師は、独立開業権を持った医療系国家資格で外傷性が明らかな損傷に対して、整復・固定法を施す行うスペシャリストです。

厚生労働省が平成30年に示した要件によると、以下の施術管理者の要件を満たせば療養費受領委任が可能です。

・令和6年3月まで2年間の実務経験を有すること、以降は3年間の実務経験を有すること。
・16時間以上2日間程度の研修を受講すること。

このように国家資格としても確立されており開業による収入増加も期待できそうですが、厚生労働省が行った令和3年賃金構造基本統計調査によると、日本の平均賃金に対して雇用されている柔整師の年収は低かったことが報告されています。

また、公益社団法人日本柔道整復師会よると開業しても施術所の半数は年間売上高が500万円以下であるというデータも公表されており、開業しても然程の収入と言えるかは微妙です。
近年、スポーツ、介護などの雇用先も増え「開業しない」という選択肢も多いです。
令和2年衛生行政報告例(就業医療関係者)によると、平成30年〜令和2年の柔道整復師の増加率が3.8%に対して施術所の開業率は0.6%増加と、10年前の調査に比べると開業率は低下しています。(平成22年〜24年の柔整師増加率は3.2%に対して、施術所増加率は12%)
また、接骨院の多くが長時間労働であることと、東京商工リサーチによると平成30年時点で接骨院などの倒産率は5年連続上昇と報告されています。これまでの開業と比較して、近年の柔整師の開業に対するスタンスとして、長時間労働や倒産リスクやまた実際の生活に伴う賃金含めた収支等を鑑みた結果、不安感が以前より高まっており、結果的に「開業しない」という選択肢も多くなってきているのではないかと考えられます。

これら上記の状況からも、柔整師が副業を考える主な理由は収入増加、本業のリスクヘッジを図るためでしょう。長時間労働の傾向にある柔整師にとって、副業の鍵は時間の管理と健康維持です。

 

柔道整復師が副業を始めるためのステップ

必要な許可やライセンスの確認

被雇用者は企業の就業規則を事前に確認しましょう。副業禁止あるいは制限がある場合、無断の副業は最悪懲戒です。そして、検討している副業のルールに関しても確認しましょう。例えば、公益社団法人日本機能訓練指導協会によると機能訓練指導員に就くには対象の研修を修了する必要があるとしています。

また、副業開始後の話ですが、副業の年収が20万円以上の場合は確定申告が必要です。また年収が20万円以下の場合でも、住民税の申告は必要です。合わせて、フリーランスの場合でBtoBの場合はインボイス対応が求められる場合もあります。こうした、税金などの手続きも確認しましょう。

副業で始めるビジネスモデルの検討

職業形態として、正規雇用(正規)、パートなどの非正規雇用(非正規)とフリーランスの計3パターンに分かれます。

正規は待遇面に優れる一方で制約が多い傾向にあり、非正規は期間が定められ待遇面で劣る代わりに自由がききやすい傾向にあります。また、フリーランスは年齢、場所、時間に縛られずに技術や情報次第で収入は増やせること、開業者は青色申告など節税の優遇が可能ですが、雇用保険に入れない、社会保険料も全額自己負担など不利な面もあります。

また副業全般にあてはまる特徴として、
・長所:技術向上や本業以外での息抜きになる可能性がある。
・短所:スケジュールが煩雑になり管理が必要なことと、長時間労働になる可能性が高いこと。
が挙げられます。

副業を行う上で一番多い形が正規雇用と非正規雇用の組み合わせです。
非正規の利点でもある時間の自由度があることを生かして、すきまの時間で働きます。非正規勤務は待遇面や長期雇用の保障がないことですが、この働き方では正規雇用と混ぜ合わせることでこれらの欠点をカバーします。

同様の形で正規雇用とフリーランスの組み合わせもよく見かけます。
実際には独立を考えている人がフリーランスとして軌道に乗るまでの一時的な経過として行っていたり、その逆もしかりでフリーランスがメインであるも収益が上がらず仕方なくこの形になっていることもあります。

また時短正社員やリモートワークなどの条件等はあるものの、これらをクリア出来れば本業・副業共に正規雇用として働くといったことも可能です。最も安定性がある環境である一方、それぞれの本業がどっちつかずとなり疎かになる可能性があります。

すべてに通じることではありますが、特に意識すべきポイントとして収入安定の鍵は明確なビジネスモデルの確立です。特に、フリーランスの場合は誰に、何を、どうやって提供し、そしてそれを如何にマネタイズ化することを整理しておきましょう。

自身のスキルや経験を洗い出す

副業選択の基準は、今持つ自分の技術・資格です。

異業種異職種の副業を未経験で務めるとした場合、環境適応も技術習得に苦労することは想像がつきます。本業を疎かにせず副業をするためにも、自分のスキルの中から職業を選択するのがベターでしょう。

柔整の仕事は極論「サービス業」であり、医療、介護・福祉、スポーツ分野、接客に跨ります。副業もこの中から選ぶことで適応し易くなり、副業の技術向上も本業にプラスになります。

ただし、一見本業と関係なさそうな資格も役に立つ場合は有り、例えば簿記資格は将来開業する場合に重要な知識、技術となります。例えば、会計、税金関係を税理士に依頼する代金は経費として計上できるため節税になるという売り文句を税理士さんたちはよく言ってきます。

しかし、安定した収入がある状態なのであれば面倒な書類作業を税理士に丸投げするのも分かりますが、売上が安定していない時期に純利益を減らしてまで頼むのかということです。また、税理士さんに実際に依頼するタイミング(経営状況)というのは自分で判断する必要があります。

何に今どれくらいお金がかかっているのかといったお金の流れを知らないというのは、経営上とてもリスクがあります。柔整師が扱う療養費は請求から現金化されるまでには数ヶ月かかることからも、キャッシュフローに失敗して黒字倒産をするという例も実際にあります。

税金やお金のことを知っておくことは開業に限ったことではなく、一般社会人としても役に立つことですので事務職はとても勉強になります。

もう一点、個人の適正という観点で考えると、性格や傾向、体質も判断基準となります。例えば、夜職には向き不向きがあります。得手不得手も含め自分で分かりづらい場合は、家族や友人の意見を参考にしましょう。

副業を本業にプラスさせるためのアドバイス

時間管理が基本

時間管理は労働者本人の社会的信用に繋がり、遅刻などは双方の企業、顧客、取引相手に迷惑をかける行為です。特に家族がある場合は家族行事や学校行事など複雑化するので、スケジュール管理は確実に行いましょう。

スマートフォンには便利な時間管理アプリもあるので上手く活用しましょう。

セルフケアとストレスの軽減方法

副業を始めると労働時間が伸びるため心身の健康を害すリスクが高くなるので、如何に健康を保つのかが重要になります。基本は計画的な休息なので、スケジュールは徹底的に管理しましょう。

厚生労働省でも心身の健康維持、予防は、食事、睡眠、運動のバランスがとれている生活習慣の維持とあります。

一点面白い点は、厚生労働省の第132回労働政策審議会安全衛生分科会(資料)によると副業している人の方がストレスや不安が少なく、特にフリーランス×フリーランスの働き方は健康診断での有所見率もストレスチェックでの高ストレス判定率も最も低いことが報告されています。

副業との関連性を明確にする

副業は本業の企業とすれば自企業の情報管理の点でも人員確保の点でも副業の許可はリスクがある中、許可するのは労働者の質向上を期待しているからです。

企業側の立場になっても考えましょう。

柔道整復師向けのおすすめ副業一覧

厚労省が導入を推進している短時間勤務ながら正規雇用同様の待遇を受けられる制度に、短時間正社員制度と、似た制度で育児介護休業法にて期間と対象要件が異なる短時間勤務制度とがあり多様な働き方は少しずつ広がっています。

多様な働き方を導入している企業とは言えど、短時間勤務制度はあくまで従業員が育児、介護をしながら企業に勤務をすることを支援する制度であるため、制度利用中の副業を認める企業は恐らくかなり少数です。

あくまで副業を考えている場合は、短時間正社員を認めている企業を選択する必要がありますが、実態はそこまで進んでいないようです。

令和3年度雇用均等基本調査によると多彩な正社員制度を導入する企業は事業所総数の約20.1%、産業別で導入率が高いのは「複合サービス事業」で48%、「金融業・保険業」で44.8%、「宿泊業・飲食サービス業」30%とあります。

「医療・福祉」は13.4%と導入が遅いため、もし制度導入企業の社員募集があった場合は倍率も高くなることが予想されます。スポーツジムなどの「生活関連サービス業・娯楽業」も20.3%なので、就職活動は企業分析などが必須です。

以上を考慮した上で、時短勤務にて安定的ながらもゆとりを持って副業したいと考えている方におすすめの職業は、

・接骨院・・・本業とは違う客層、施術方針であったりと技術向上に直結し易いでしょう。
・病院・・・リハビリを行う場合はみなしPTなどの資格が必要になりますが、こちらも幅広い症例に触れる機会となります。
・介護・・・年々、柔整師への期待が高まっている分野です。介護支援専門員など資格が必要な場合がありますので、事前に確認をしておきましょう。

・リラクゼーション施設・・・接客でも特に利用者に接触する点で、柔整にも通じるため参考になります。
・スポーツジム・・・スポーツの分野で活躍を目指す柔整師には、マシーントレーニングを学ぶ機会になります。
・養成学校・・・教員資格は必要ですが、指導に興味がある方には良い選択です。

一方で、自分の力で収益を得て生きたい方におすすめな副業は主に2つ、

・開業:接骨院(完全予約制など)、リラクゼーションなどのフランチャイズオーナーや代理店などを経営することです。オーナーの場合は人を雇えば、自分が店舗に立たないようなシステムにもできるため、複数経営も可能です。

・在宅ワーク:アフェリエイトサイト運営(広告費)、クラウドソーシングサイトの利用(ライティングなど)が考えられます。最初は小さな仕事が多く、中々収益に繋がりづらいですが諦めずに続けていくことがポイントです。
充実した副業は、如何に具体的に副業のある生活と遠い将来をイメージできるかにあります。その参考になればと思います。

まとめ

かつてない高齢社会の日本で、柔軟な働き方が求められています。柔整業界の持つ収入面も待遇面のデメリットを解決する手段として副業は有力です。本業を活かした副業は企業との合意の基で行われるべきです。そしていざ副業となれば、時間管理と健康管理が成功の秘訣です。

職業の選び方は、実力を活かしたいのであれば個人事業主、安定を求めるのであればセカンドワークといった認識で良いように思います。どちらも国の制度を十分理解して臨みましょう。

 
【参照URL】
厚生労働省 令和4年度雇用均等基本調査 関連資料 事業所調査 結果概要
厚生労働省 第132回労働政策審議会安全衛生分科会(資料)
厚生労働省 第91回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会資料
厚生労働省 療養費の改定等について 柔道整復師の施術に係る療養費の改定等について
事務連絡 平成30年3月5日 施術管理者の要件について(周知のご依頼)
厚生労働省 令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況
厚生労働省 派遣労働者の同一労働同一賃金について 労使協定方式(労働者派遣法第30条の4)「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準」について ◎同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(令和5年度適用)
令和3年賃金構造基本統計調査による職種別平均賃金(時給換算)1ページ 1121〜1169
厚生労働省 第91回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会資料
株式会社 東京商工リサーチ、2018年「マッサージ業、接骨院等」の倒産状況は過去10年で最多93件に急増、5年連続で前年を上回る
公益社団法人 日本柔道整復師会 事業内容 日本機能訓練指導協会
厚生労働省 第132回労働政策審議会安全衛生分科会(資料)
厚生労働省 令和3年度雇用均等基本調査 関連資料 概要全体版

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