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あん摩マッサージ指圧師のボーナス(賞与)の総まとめ

多くの社会人にとって1年のうちで楽しみな時期は、夏と冬のボーナスの時期ではないでしょうか?大きな出費もこの時期を目掛けて行うものです。そんなボーナスについてのあれこれを、あん摩マッサージ指圧師の視点で見ていきます。

 

ボーナス(賞与)は常にあるものではない

ボーナスとは固定給とは別途支給される給与のことを指しますが、まず大切なことを確認しておきましょう。日本国内において、いかなる企業もボーナスが必ず支払われるものではありません。なぜならば、ボーナスに関して法的な支払い義務が企業には課せられていないためです。

つまり、ボーナスとは企業独自のものだということです。言い方を変えると、企業が従業員への労いの目的や従業員の満足度を上げるための施策、長期雇用のための施策などといった目的がそこにはあるということです。

ただし、雇用契約書や就業規則に規定している場合は、企業にはボーナスを支払う義務が発生します。小規模な企業であれば就業規則を作成していない場合もあるため、企業に勤める場合は雇用契約書のボーナスに関する規定の部分をしっかり確認しましょう。

そうは言っても、多くの場合は「業績による」や「ボーナスあり」のみで金額を保証するものではないことが多いですが…。

 

あん摩マッサージ指圧師のボーナス事情

さて、ここからが本題であるあん摩マッサージ指圧師のボーナスです。数少ない医療系の国家資格であるあん摩マッサージ指圧師ですから、さぞかしボーナスも多いと思いますよね。しかし現実は甘くありません。多くのあん摩マッサージ指圧師に、ボーナスなどないのですから。

あん摩マッサージ指圧師の働き口とボーナスの関係

こう言ってしまうと寂しいものがありますよね。もちろん、ボーナスが支払われやすい就職先というのもあります。主にあん摩マッサージ指圧師の働き口として多いのが、①訪問マッサージ、②治療院(接骨院を含む)、③病院、④介護施設、⑤企業(ヘルスキーパー)です。

①訪問マッサージ:企業勤める場合やフランチャイズで行う場合とありますが、企業に属していても個人事業主のような立ち位置となることが多く、ボーナスどころか給与も売上次第であったりします。

②治療院:法人化している場合は、就業規則次第ではボーナスの可能性はありますが、治療院の多くは個人の施術家が診療と経営を行っている院であり、就業規則を定めていない可能性が大きく、ボーナスとはまさに業績が良い時に支給されるかもしれない「おまけ」となります。
③病院:こちらも事業規模にもよりますが、治療院よりも経営規模が大きいことが多いので多少のボーナスは期待ができるものと考えられます。ただし、時世を受けてか何なのか、非正規雇用であったりするところもあるので注意が必要です

④介護施設:病院と併設しているデイケアなのか、企業が運営するデイサービスなのかなど形態は様々ですが、総じて薄給が取り沙汰されています。処遇改善加算などで政府は力を入れてはいるものの、ボーナスで還元するかベースアップで還元するかは企業次第です。

⑤企業:雇用形態は企業毎ではありますが、企業の中には福利厚生の一環として社員向けにマッサージを提供する場合があり、そこに従事する働き方をヘルスキーパーと呼びます。企業に一般雇用されることが多いので、最もボーナスに期待ができる働き方だと言えるでしょう。

一般企業のボーナスとは?

そうなってくると、一般的なボーナスというものに俄然興味が湧きますよね。公務員や多くの企業では夏の時期(7月の給与)と冬の時期(12月の給与)の2回、或いはどちらか1回、場合によっては企業の業績によって決算賞与(3月の給与)の形で年に合計3回に分けて支給されます。

一般企業の年間平均ボーナス額は、国税庁の実施した令和4年の民間給与実態統計調査によると71.6万円とあります。同調査で一般企業の平均給与は386万円とあるため、

386万円÷12か月=32.2万円(月給)
71.6万円÷32.2万円=2.2か月

つまり、月給の2.2か月分が年間ボーナスの平均額となります。前述のことを踏まえると、ヘルスキーパーのボーナスは年2.2か月分を期待できるわけです。だからこそ悔しいのが、他の働き口ではどうしてボーナスに期待を持てないのかと口惜しくなります。

あん摩マッサージ指圧師の給与の仕組み

毎日が戦いである社会人にとって、大きな心の支えであるボーナスがあん摩マッサージ指圧師にはない…。そこには、あん摩マッサージ指圧師特有の給与システムが関与しているのです。

給与やボーナスは勤め先の売上に依存する

一般の企業においてボーナスを支給する仮定で説明はしてきましたが、多くの治療院のように企業でも、社長(個人事業主)と従業員の二人や三人だけの小規模な企業や土建業の場合、ボーナスどころか給与自体が企業の売上に影響を受ける場合があります。

主な正社員の給与形態は、月給と呼ばれる固定給で毎月支払われます。その内訳は企業の定める給与規定に則って、基本給を中心に、残業手当、休日手当、夜勤手当、その他に、通勤手当、資格手当、役職手当、住宅手当、家族手当などであることは周知のことと思います。

一方で、同じ月給でも日給月給制と呼ばれる給与体系があります。つまり、規定の日給額を当月の稼働日数で乗じて月毎に支給するというパターンです。土建業で考えると、仕事はいわゆる募集に対してコンペで決まるため、企業がコンペで案件を勝ち取らないと仕事はありません。

そのため、仕事のある月は給与が発生しますが、仕事のない日は給与がないということになります。あん摩マッサージ指圧師の場合も、繁忙期であれば企業も安定した収益を確保できるものの、閑散期は収入を見込めないため出勤日が減ってしまい、結果給与が不安定になることがままあります。

ちなみに、法人における役員の場合も報酬形態は業績連動となります。

施設形態や施術内容でも給与の基準は変わる

給与形態を考えるとき、忘れてはいけないのが歩合制の存在です。温泉施設などで、あん摩マッサージ指圧師の指名ができるサービスがあるのを見たことがあるのではないでしょうか?複数人あん摩マッサージ指圧師がいても、予約の多い方が暇な方と同等の給与では納得がいきませんよね。

歩合制とは、個人の成績や売上に応じて給与が支給される給与形態のことで、給与の割合が100%歩合給の場合を完全歩合制、基本給などの固定給にプラスして業績分が加算される給与形態を一部歩合制と呼びます。

労働基準法により最低賃金が保証されているため、完全歩合制は業務委託など特殊な場合のみであり、多くは一部歩合制です。一般企業においては営業職、保険業などで御馴染みかと思います。

筆者は過去に販売業の経験もあるのですが、その時のボーナスは展示会の個人売上の2%という過酷なものでした。100万円売っても2万円、1000万円売っても20万円。辛かった。

あん摩マッサージ指圧師の場合、施術人数に乗じた支給、個人売上に特定のパーセンテージ分の支給など企業毎の給与規定に則って支給されることが一般的です。例えば、固定給総額が30万円、歩合給は比率が20:80としたとき、月20日出勤で毎日3000円の自費治療を10人に行ったとすると、
つまり、一部歩合制によって月あたり12万円、年間で144万円も収入に差が付きます。腕が良ければ、高収入が期待できる一方で、ボーナスは支給されない給与システムにしている場合があるということです。

あん摩マッサージ指圧師のスタンダードな働き方である業務委託で訪問マッサージを行う契約の中には、完全歩合制のことがあります。こちらも例に挙げると、利用者一人あたりの単価が6000円固定で歩合率50:50だったとき、月20日出勤で1日10人を施術した場合(交通費などは除く)、

3000円×20日×10人=60万円

働き方、契約によっては青天井です。ただし、業務委託ですので一般的にはボーナスはないですし、繰り返しにはなりますが売上がなければそれまでです。

ボーナスや収入UPしたいあん摩マッサージ指圧師の方へ

ここまで見てきた通り、あん摩マッサージ指圧師のボーナスに関しては支給されてもお情け程度のことも考えられることから、筆者としては端からボーナスを当てにしないことをお勧めします。そもそも、あん摩マッサージ指圧師にはそれ以上に大きな収入を得られるチャンスがあるからです。

施術技術はもちろん接客技術を向上させて患者のリピート率が上がれば、契約次第では毎月がボーナス月になるからです。この仕事においては、接客マナー講座も決して馬鹿にできません。また、積極的な資格取得も検討に入れましょう。

外傷に特化するのであれば柔道整復師、不定愁訴に強く訪問型の施術形態とも相性が良い鍼灸師、スポーツ現場との連携を想定するのであればアスレチックトレーナー、福祉施設と連携で大量に顧客を獲得するのであればケアマネージャーなどコストは大きいですが長い目で収入UPとなります。

最終的には独立開業をすることで、更なる収益を目指すことも可能となります。先ほどの条件で考えてみると分かりますが、利用者一人あたりの単価が6000円固定だったとき、月20日稼働で1日10人を施術した場合、

6000円×20日×10人=120万円

ここから交通費や諸経費諸々を差し引いたとしても、間違いなく高収入です。これは同じ医療系の中で開業権を持つ柔道整復師や鍼灸師よりも経費が安く抑えられる、あん摩マッサージ指圧師の大きなアドバンテージです。

それでも、ボーナスは社会人の精神安定剤であったりします。しかし、あん摩マッサージ指圧師にしかできない働き方もあるのもまた事実です。どうしてもボーナスにこだわるのであれば、間口は狭いですが企業のヘルスキーパーを目指すのが比較的期待を持てるでしょう。

一般企業への就労となるヘルスキーパーであれば、給与体系も福利厚生も企業の就業規則に則って支払われることと、ヘルスキーパーを設置するほどの企業なので事業規模は大き目か、あるいは安定した経営をしていることが予測されるからです。

まとめ

あん摩マッサージ指圧師のボーナスは、一般企業と比べて少ないか、支給されないことが多いです。給与は勤め先の売上や施術内容に依存し、歩合制が一般的です。ボーナスを期待するよりも、技術や接客力を向上させて収入を増やすことが重要です。

資格取得や独立開業も収入アップの手段となります。ボーナスにこだわる場合は、企業のヘルスキーパーを目指すのが良いでしょう。

 
【参照URL】
国税庁 統計情報 令和4年分 民間給与実態統計調査

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