鍼灸師の難易度は高い?合格率や学校選びのポイント、試験の概要を解説
業界動向・知識
鍼灸師
鍼灸師は国家資格なので、鍼灸師として働くためには国家試験に合格しなくてはいけません。国家試験に合格し、国家資格を取得して初めて、学校で学んだ知識を活かして施術をおこなうことができるようになります。
また独学で鍼灸師になることはできず、鍼灸師の養成課程がある専門学校か大学に通う必要もあります。今回は鍼灸師になるために必要な学校進学と国家試験合格の難易度についてご紹介していきます。
鍼灸師とはどんな資格
実は「鍼灸師」という資格は存在しません。鍼灸師とは、はり師・きゅう師という2つの資格を所有している人を指す言葉だからです。はり師、きゅう師の両方の国家試験を同時受験する人が多いこと、またそれに伴って両方の施術をおこなう人が多いことから、まとめて鍼灸師と呼ばれています。
どちらも、道具を使って身体にあるツボを刺激することで、人間が本来持つ自然治癒力を高めたり健康回復を助けたりする職業という点では同じです。
その名の通りですが「鍼」を用いて施術する人をはり師、「灸」を用いて施術する人をきゅう師と呼びます。
また、はり師ときゅう師はどちらも国家資格です。国家試験の名称はそれぞれ「第〇回はり師国家試験」、「第〇回きゅう師国家試験」であり、同時に受験すれば一方の共通科目が免除になることもあり、両方の資格を同時に取得するのが一般的なようです。
国家試験の受験資格を得るには
鍼灸師の国家試験の受験資格を得るには、3年制の専門学校または4年制の大学に進学して、鍼灸師の養成課程を修了する必要があります。
晴れて国家試験に合格することができれば、鍼灸師として働けるようになります。
鍼灸師の国家試験の難易度はどれくらい?
鍼灸師になるには国家試験に合格する必要があります。そこで気になるのが、国家試験の難易度ではないでしょうか。
以下では、はり師・きゅう師それぞれの国家試験の難易度や合格率について、詳しく解説します。
はり師国家試験の合格率
はり師国家試験の受験者数、合格者数、合格率の推移は以下のようになっています。
試験回・年 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
第29回・2021年 | 3,853名 | 2,698名 | 70.0% |
第28回・2020年 | 4,431名 | 3,263名 | 73.6% |
第27回・2019年 | 4,861名 | 3,712名 | 76.4% |
第26回・2018年 | 4,622名 | 2,667名 | 57.7% |
第25回・2017年 | 4,527名 | 3,032名 | 67.0% |
第24回・2016年 | 4,775名 | 3,504名 | 73.4% |
第23回・2015年 | 4,976名 | 3,808名 | 76.5% |
はり師国家試験の合格率は、70%前後を推移しています。2018年には合格率が50%台に落ち込んでおり年度による難易度の差は見受けられるので、油断することのないよう在学中にしっかりと国家試験に合格するための準備をしておきましょう。合格者数に上限があるわけではないので、決して難易度が高すぎることはないでしょう。
きゅう師の国家試験の合格率
次に、きゅう師国家試験の受験者数、合格者数、合格率の推移を見ていきましょう。
試験回・年 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
第29回・2021年 | 3,797名 | 2,740名 | 72.2% |
第28回・2020年 | 4,308名 | 3,201名 | 74.3% |
第27回・2019年 | 4,655名 | 3,656名 | 78.5% |
第26回・2018年 | 4,555名 | 2,845名 | 62.5% |
第25回・2017年 | 4,443名 | 3,010名 | 67.7% |
第24回・2016年 | 4,732名 | 3,550名 | 75.0% |
第23回・2015年 | 4,893名 | 3,773名 | 77.1% |
きゅう師国家試験の合格率は、はり師国家試験よりも高くなっているものの大きく差はないことが分かります。
はり師国家試験と同時受験する方もそうでない方も、合格基準点をとることを目指してしっかりと準備しておけば、十分合格を狙えるでしょう。
鍼灸師の国家試験合格率が高い学校
鍼灸師の国家資格取得を目指すには、鍼灸師の養成課程ある学校に進学する必要があります。養成課程を修了すると国家試験の受験資格を得られるので、合格すれば晴れて鍼灸師となります。
以下では、鍼灸師の国家資格取得を目指す際に進学すべき学校について詳しく見ていきます。
下記のページでは鍼灸師の資格を取得できる学校をご紹介しているので、学校選びの参考にしてみてください。
合格率が高い専門学校
専門学校は3年制で、学費は400~500万円ほどかかるといわれています。
専門学校の特徴として、大学(4年制)よりも1年短いため早く現場に出られる、入学のハードルがそこまで高くない、などがあります。鍼灸師1本に絞って充実した実技環境・カリキュラムのもとで資格取得や就職のために学びたい方は、専門学校がおすすめです。
ちなみに、ほとんどの専門学校では鍼灸師の国家試験の合格率をホームページ上などで公表しています。そのため学校選びの際には、国家試験合格率も確認したうえで少しでも合格率が高い学校を選ぶことが重要です。
参考までにいくつかの専門学校の国家試験合格率(はり師/きゅう師)を見てみましょう。(各公式サイトに記載の最新の数字を記載しています。2021/6現在)
- 東京医療専門学校(東京) 93.8%/93.8%
- 日本健康医療専門学校(東京) 97.6%/97.6%
- 呉竹鍼灸柔整専門学校(神奈川) 88.4%/91.3%
- 朝日医療専門学校広島校(広島) 92.8%/93.8%
合格率が高い大学
大学は4年制で専門学校よりも1年長いこともり、学費は500~600万円と高めです。
大学の特徴として、大卒として「学士」を取得できる、鍼灸師だけではなく一般企業への就職も視野に入れられる、などがあります。鍼灸師を目指しつつも、それ以外の一般教養についても4年間かけて学びたいという方には大学がおすすめです。
参考までにいくつかの大学の国家試験合格率(はり師/きゅう師)を見てみましょう。(各公式サイトに記載の最新の数字を記載しています。2021/6現在)
- 明治国際医療学校(京都) 88.6%/88.6%
- 関西医療大学(大阪) 100%/100%
- 森ノ宮医療大学(大阪) 89.6%/87.5%
大学では一般教養も並行して学んでいるため、専門学校よりは合格率が低い傾向にもありますが、それでも90%前後の大学があるのは、一般教養も学びながら鍼灸師の国家試験に合格できるくらいの効率的で質が高い教育がなされている証拠だといえるでしょう。
鍼灸師国家試験の概要
鍼灸師の受験資格は「学校教育法第90条第1項の規定により大学に入学することのできる者で、3年以上、文部科学大臣の認定した学校又は厚生労働大臣の認定した養成施設(いわゆる専門学校)で必要な知識及び技能を修得した者。ただし、著しい視覚障害者については、学校教育法第57条の規定により高等学校に入学することのできる者で、あん摩マッサージ指圧師は3年以上、はり師及びきゅう師は5年以上、上記の学校又は養成施設で必要な知識及び技能を修得した者。」とされています。
つまり、文部科学大臣の認定した学校又は厚生労働大臣の認定した専門学校で、3年以上の鍼灸師の養成課程を修了した者に受験資格が与えられます。著しい視覚障害者については、中卒者であっても5年以上教育を受ければ、受験資格を得ることができます。
受験手数料として、1資格試験につき14,400円がかかります。
試験会場は
- 北海道
- 宮城県
- 東京都
- 新潟県
- 愛知県
- 大阪府
- 広島県
- 香川県
- 福岡県
- 鹿児島県
- 沖縄県
の全11会場です。視覚障がい者の方は各都道府県での受験が可能です。
解答はすべて客観式四択問題よる筆記式となっています。
合格に必要な点数は170点満点中102点(正答率60%)です。試験科目(13科目)については以下でご紹介しますが、はり師国家試験ときゅう師国家試験を同時に受験する場合は、申請することにより「はり理論」又は「きゅう理論」以外の共通科目について一方の試験を免除することが可能です。
視覚障害者の方は、申請により拡大文字、超拡大文字または点字のいずれかによる受験を認められます。また、学校長または施設長の承認を受けた者に限り、試験問題を録音したCD又は読み上げの併用や照明器具、拡大読書器および点字タイプライターの持ち込みが可能です。
国家試験に合格すると合格証が交付されるほか、必要に応じて申請すれば合格証明書(有料)も受け取ることができます。
実際にどんな問題が出題されるのか見てみたいという方に、下記のページでは過去問に挑戦することができます。
はり師の国家試験科目
はり師の国家試験科目は、以下のとおりです。
- 医療概論(医学史を除く)
- 衛生学、公衆衛生学
- 関係法規
- 解剖学
- 生理学
- 病理学概論
- 臨床医学総論
- 臨床医学各論
- リハビリテーション医学
- 東洋医学概論
- 経路経穴概論
- はり理論
- 東洋医学臨床論
きゅう師の国家試験科目
きゅう師の国家試験科目は、以下のとおりです。はり師の国家試験科目13科目のうち、「はり理論」が「きゅう理論」に変わったものになります。
- 医療概論(医学史を除く)
- 衛生学、公衆衛生学
- 関係法規
- 解剖学
- 生理学
- 病理学概論
- 臨床医学総論
- 臨床医学各論
- リハビリテーション医学
- 東洋医学概論
- 経路経穴概論
- きゅう理論
- 東洋医学臨床論
国家試験が実施される時期
鍼灸師の国家試験は、毎年2月下旬に開催されています。寒い時期なので、試験中の防寒対策が求められるでしょう。
ちなみに合格発表は、3月下旬に厚生労働省ホームページの資格・試験情報のページ及び公益財団法人東洋療法研修試験財団ホームページに、その受験地及び受験番号を掲載する形でおこなわれます。試験日からは約1ヶ月が目安です。
鍼灸師の国家試験対策におすすめの「国試黒本」
「国試黒本」は、1人でも多くの学生の方が国家試験に合格できることを目指して作られた参考書です。鍼灸師の国家試験対策ができる「鍼・灸・按摩マッサージ指圧師編」が発売されているので、ぜひ黒本を使用して万全の対策をしてみてはいかがでしょうか。
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鍼灸師の国家試験難易度まとめ
鍼灸師(はり師・きゅう師)の国家試験合格率はともに約70%です。同時に資格を取得することが一般的なので、両資格の間に合格率の開きはほとんどありません。現状としても、鍼と灸両方による治療をおこなっている治療院が多いので、2つまとめて取得するのがおすすめです。
合格に必要な点数は170点中102点なので、過去問では6.5割以上は余裕でとれるようにしておくと安心です。
受験者の全員が3~4年のあいだ学校に通い勉強して受験した結果、落ちた方もいると考えると決して簡単な資格ではないので、鍼灸師になりたい、という夢を持っている方は学校選びも慎重におこない、在学中はしっかりと合格に向けて準備をしておきましょう。