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柔道整復師になるには?この1年でやるべきことを詳しく解説

柔道整復師を志すとき、専門学校や大学でこの春に最終学年となる学生にとって、この1年間は国家試験の合格、そして、就職に向けた非常に重要な時期となります。この記事では、より良い就職を実現するために最終学年の1年間で学生の皆さんがすべきことを包括的に解説します。

柔道整復師とはそもそもどんな職業?

最初に柔道整復師とはどんな職業なのか、簡単に振り返っておきましょう。国家資格を有する柔道整復師という職業は、手術をせずに治療を行う「非観血的療法」の専門家です。

活躍の場は幅広く、地域に根ざした接骨院・整骨院や介護・福祉施設、医療・リハビリ施設のほか、フィットネスジムなどに所属するパーソナルトレーナーやスポーツトレーナーとして、実業団やプロのアスリートを支えている人もいます。

柔道整復師になるためには、柔道整復師の養成科目・コースがある専門学校や短大、大学で必要な科目を履修する必要があるほか、毎年3月上旬ごろに実施される国家試験に合格することが求められます。

 

柔道整復師になるための3つのルート

柔道整復師になるには、高校卒業後もしくは社会人からの進学先によって、大別して3つのルートがあります。

  • 専門学校に進学 → 国家試験合格 → 柔道整復師
  • 短大に進学 → 国家試験合格 → 柔道整復師
  • 大学(4年制)に進学 → 国家試験合格 → 柔道整復師

柔道整復師になるためのルート1:専門学校に進学 → 国家試験合格 → 柔道整復師

1つめは、厚生労働大臣が指定した専門学校に進学して国家試験に合格し、柔道整復師として働くルートです。この場合の専門学校は3年制以上となっています。比較的学費が抑えられること、実技などの実践的なカリキュラムが多く即戦力になりやすいこと、資格試験対策が充実していることなどが、特徴となります。

柔道整復師になるためのルート2:短大に進学 → 国家試験合格 → 柔道整復師

2つめは、リハビリテーション科などがある3年制の短期大学に進学して国家試験に合格し、柔道整復師として働くルートです。より学問的に学べ、大学よりも学費を抑えられることが特徴となります。

柔道整復師になるためのルート3:大学(4年制)に進学 → 国家試験合格 → 柔道整復師

3つめは、医療技術系の学部がある4年制大学に進学して国家試験に合格し、柔道整復師として働くルートです。一般教養も含めて学べること、理論などを学術的に学べること、就職においてより幅広い選択肢を得られることなどが特徴となります。

内定・就職に向けての1年、2つのスケジューリングを確認

  • 国家試験に合格する前に就職活動を行うスケジューリング
  • 国家試験に合格してから就職活動を行うスケジューリング

前述の通り、柔道整復師になるためには3つのルートがありますが、いずれも最終学年の1年間で就職活動を行うのが一般的です。

就職に向けてのスケジューリングは、大きく2つに分かれます。「国家試験に合格する前に就職活動を行うスケジューリング」と「国家試験に合格してから就職活動を行うスケジューリング」です。柔道整復師になることを目指している学生は、どちらのスケジューリングを選択すべきでしょうか。比較しながら考えていきましょう。

国家試験に合格する前に就職活動を行うスケジューリング

  • メリット:就職活動に十分な時間をあてることができる
  • デメリット:2つを並行して行うので忙しくなる

国家試験に合格する前に就職活動を行うスケジューリングでは、以下のような流れになります。

近年、夏から秋ごろに求人を募集する整骨院や接骨院、介護施設などが増えており、国家試験の合格を待たず、ある程度長い時間をかけて就職活動を行うことで、より良い条件の就職先が見つけやすくなります。

一方、認定実技審査や国家試験の合格を目指しながら就職活動をするので、国家試験に合格してから就職活動を行うスケジューリングに比べ、夏から秋ごろにかけて忙しくなります。

・4月:最終学年に進級・履歴書の準備
いよいよ就職前の最終学年が始まります。3年制の専門学校や短大なら3年生、4年制の大学なら4年生に進級します。希望する就職先のイメージや条件などを整理し、履歴書などの書類を準備する時期となります。志望職種で見事に内定を獲得した先輩の話を聞くと、履歴書などは「春休みから準備しました」(ケイズグループ入社者)という話もありますので、実際に就職活動を始める時期といえるでしょう。

・7〜11月頃:就職活動 → 内定獲得
7〜11月の夏から秋頃にかけて面接や試験などの実際の就職活動を行います。国家試験を受験する前に内定を獲得してしまいます。あわせて、国家試験対策の勉強も始めます。夏から試験対策を始めた先輩のなかには「もっと早くから勉強しておけば、もっと楽だった」という声もありますので、就職活動だけにかたよらず、国家試験対策も進める必要がありそうです。

・10〜12月頃:卒業見込者に対する認定実技審査
10〜12月頃には、専門学校内で卒業見込み者に対する認定実技審査が行われます。あわせて卒業認定試験も行われ、学校での学びはおおよそ終了となります。

・1月:国家試験の受験手続き
1月に国家試験の受験に必要な書類を提出し、受験手続きを終えます。3月の受験のため、対策も追い込みの時期となります。

・3月上旬:国家試験の受験
3月上旬に筆記形式による国家試験を受験します。

・3月下旬:国家試験の合格発表
3月下旬に国家試験の合格発表が行われます。

・4月:就職
無事に国家試験に合格した場合、内定先で4月から就業を開始することになります。残念ながら不合格だった場合は、内定をもらっている就職先との相談となります。大手グループ院など、規模の大きな企業では、働きながら来年の合格を目指すケースもあるようです。

国家試験に合格してから就職活動を行うスケジューリング

  • メリット:国家試験に向けた対策に十分な時間をさける
  • デメリット:就職活動にさける時間が少なくなる

「国家試験に合格してから就職活動を行うスケジューリング」は以下のような流れとなります。

国家試験の合格後に就職活動を行うことから、認定実技審査や国家試験に向けた対策に十分な時間をかけることができますが、その反面、就職活動にかける時間が、国家試験に合格してから4月までわずかな期間しかなく、良い就職先を見つけにくくなるといったデメリットがあります。

・4月:最終学年に進級
最終学年が始まります。3年制の専門学校や短大なら3年生、4年制の大学なら4年生に進級します。国家試験に合格するまでは就職活動をせず、認定実技審査や国家試験に向けた対策を始めていきます。

・7〜11月頃:認定実技審査および国家試験対策
翌年3月の国家試験を受験するには、所定の認定実技試験に合格し、かつ卒業認定試験を受けて、卒業見込を確定しなければなりません。10月以降に開催されるこの認定実技試験と卒業認定試験に合格するための対策に集中します。

・10〜12月頃:卒業見込者に対する認定実技審査
10〜12月頃には、学校内で卒業見込み者に対する認定実技審査が行われます。あわせて卒業認定試験も行われ、学校での学びはおおよそ終了となります。卒業認定を受けたら、国家試験対策にも集中していく時期となります。

・1月:国家試験の受験手続き
1月に国家試験の受験に必要な書類を提出し、受験手続きを終えます。3月の受験のため、対策も追い込みの時期となります。

・3月上旬:国家試験の受験
3月上旬に筆記形式による国家試験を受験します。受験が終わったら、急ぎ就職活動の準備を始めます。履歴書などの書類を準備したり、求人票の研究を行い、就職の志望先を見つけていきます。

・3月下旬:国家試験の合格発表
3月下旬に国家試験の合格発表が行われます。

・3月下旬〜4月:就職活動 → 内定獲得
国家試験に合格後、実際の就職活動をスタートします。

・4〜5月:就職
就職活動をして内定を得た場合、4月以降から実際に働き始めることになります。内定が4月中下旬となった場合、入社手続きなどの都合上、5月からの就職となるケースもあります。

就職活動は早期に開始する方が有利

  • 合格する前提で就職活動を早期に進めておく

2つのスケジューリングを比べてみると、よりよい就職先を見つけるためには、7〜11月の夏から秋ごろにかけて、就職活動をするほうがベターです。ここで出遅れると、条件の良い就職先はどんどん少なくなってしまいます。

もちろん、内定をもらっても国家試験で不合格となり、予定どおり就職できない場合もあります。その場合は、内定をもらった企業にきちんと連絡してお詫びをする必要がありますが、基本的には合格する前提で就職活動を早期に進めておくべきだと言えます。

柔道整復師の資格を得るまでの、各段階におけるポイント

柔道整復師の国家試験を受験するには、卒業証明書または卒業見込証明書の提出が必要です。

この証明書を得るためには、卒業認定試験だけでなく、認定技術審査も合格する必要があります。認定実技審査、卒業認定試験、そして国家試験のすべてに合格して、晴れて柔道整復師の国家資格を得ることができるのです。

ここでは、これら認定実技審査、国家試験、就職活動において、学生の皆さんが押さえておくべきポイントについて解説していきます。

認定実技審査におけるポイントは?

  • 柔道整復実技審査
  • 柔道実技審査

認定実技審査は、柔道整復師の養成施設における卒業判定を受けるためのものです。認定実技審査は「柔道整復実技審査」と「柔道実技審査」で構成され、認定実技審査員によって行われます。

・柔道整復実技審査の審査項目

柔道整復実技審査では「診察及び整復の能力、診察及び検査の能力」「固定の能力」の評価が行われ、それぞれで用意されている項目のうち1つを受審します。受審項目は審査開始前に出題カードを引いて、決められます。それぞれの項目は以下の通りです。

▽診察及び整復の能力、診察及び検査の能力
・鎖骨定型的骨折
・コーレス骨折
・肩関節前方烏口下脱臼
・肘関節後方脱臼
・膝関節側副靭帯損傷
・足関節外側靭帯損傷

▽固定の能力
・コーレス骨折(クラーメル副子と局所副子・三角巾固定)
・第5中手骨頸部骨折(アルミ副子掌側固定)
・肘関節後方脱臼(クラーメル副子・三角巾固定)
・手第2指PIP関節背側脱臼(アルミ副子背側固定)

出典:公益法人 柔道整復師研修試験財団 令和2年度認定実技審査要領(PDF)より編集部で抜粋

・柔道実技審査の審査項目
一方、柔道実技審査においては人としてのふるまいの基本や、礼儀作法の習得ができているかが審査されます。審査項目は「服装・態度」「受身」「礼法」「口述審査」となっています。審査内奥は以下のとおりです。

▽柔道実技審査の実技項目
・服装・態度:柔道衣の着方、言動行動
・受身:右前方回転受身、左前方回転受身
・礼法:自然本体の構え、立礼、正坐のしかた、坐礼など
・口述審査:下記について、各1題、計3題が出題される
(1)柔道について:例 柔道の創始者はだれですか?
(2)投の形について:例 投げの形の手技と、技名と間合いを答えてください
(3)柔道の投技について:柔道の投げ技で、腰技を2つ答えてください

出典:公益法人 柔道整復師研修試験財団 令和2年度認定実技審査要領(PDF)より編集部で抜粋

いずれの審査でも、これまで専門学校や大学などの養成施設で練習・習得してきた成果が試されます。審査に臨むにあたっては、各項目においてこれまで学んできたことを十分に復習しておく必要があります。

国家試験におけるポイントは?

柔道整復師の国家試験は毎年3月上旬に行われ、2021年は3月7日(日)に実施されました。試験は筆記形式で行われ、試験科目は以下の通りとなっています。

▽国家試験の試験科目
・解剖学
・生理学
・運動学
・病理学概論
・衛生学・公衆衛生学
・一般臨床医学
・外科学概論
・整形外科学
・リハビリテーション医学
・柔道整復理論
・関係法規

国家試験ではこのように多数の科目がありますが、科目によって出題数が異なるほか、難易度も科目によって違ってくるため、基本的には出題数の多い科目や問題の難易度が低めの科目で確実に点数を重ねていくことがポイントとなります。

また、試験実施に関する事務を担当する公益財団法人「柔道整復研修試験財団」の公式サイトでは、過去の国家試験の問題が公開されていますので、早い段階で過去問題を解き、試験の傾向などを自分なりに分析するのが得策です。

ちなみに国家試験における「新卒者」の合格率は以下のように推移しています。

▽柔道整復師国家試験の年度別、新卒者の合格率

柔柔道整復師国家試験の年度別、新卒者の合格率
年度 合格率
2010年度 83.4%
2011年度 92.7%
2012年度 83.7%
2013年度 91.3%
2014年度 80.8%
2015年度 82.3%
2016年度 82.9%
2017年度 78.5%
2018年度 86.1%
2019年度

84.8%

出典:公益財団法人 柔道整復研修試験財団「1. 柔道整復師国家試験の実施」より

就職活動におけるポイントは?

  • 自分が希望する条件を整理して就職先を探す

就職活動においては、それぞれ希望する勤務地や勤務施設などが異なると思いますが、まずは求人を募集している施術所などの情報を収集・整理し、自分が希望する収入や施術方針などを考慮しながら、応募対象を絞っていくのがよいでしょう。

求人情報は、学校はもちろんのこと、求人案件を多数掲載している情報サイトや、接骨院・整骨院や介護施設などの公式サイトなどから得ることができます。また、求人案件を公にしていない場合でも、電話などで問い合わせると都度募集していることがわかるケースもあります。

実際の面接などにあたっては、明るさや元気さ、清潔さ、素直さなどのほか、向上心をしっかりと持っているかなども重視されます。接骨院・整骨院や介護施設などでの仕事は「接客業」「サービス業」としての側面もあるからです。

面接の際には柔道整復のスキルに自信があっても慢心せず、謙虚な姿勢を忘れないことが大切です。

最後の1年間の過ごし方は非常に重要

この春に最終年度に進級した学生にとって、就職を前にした最後の1年間の過ごし方は非常に重要です。国家試験の合格を目指すために対策を万全にすることはもちろんですが、早め早めの就職活動が求められます。

すでに学校を卒業して就職した先輩などからも情報を集め、社会人としてよりよい一歩を踏み出せるよう、最大限努めましょう。

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