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鍼灸師の平均年収・平均月収はいくら?都道府県別データも徹底解説

鍼灸師として働くことを目指すなら、必ず知っておきたいのが「平均月収」や「初任給」です。就職先を選ぶ際に目安として使えるほか、将来の生活設計を考える際にも役立ちます。この記事では、現役鍼灸師の給与の本当のところに迫っていきます。

鍼灸師の平均年収・平均月収

  • 平均月収は全国で25万1,000円

鍼灸師の平均年収に関する公的なデータは残念ながら存在しませんが、平均月収であれば厚生労働省の「職業情報提供サイト」(日本版O-NET)で調べることができます。

ハローワークに登録されている求人データの統計によると、「はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師」の平均月収は全国で25万1,000円となっています。

この平均月収「25万1,000円」をもとに計算すると、「はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師」の平均年収は301万2,000円となります。年2回、2ヶ月分の賞与が支給される勤務先ならば年収が350万円を超えることもありそうです。

 

鍼灸師の都道府県別、平均月収は?

ただし、都道府県によって鍼灸師の平均月収は異なります。たとえば東京都の場合は22万4,000円~28万9,000円、大阪府の場合は22万5,000円~29万7,000円、福岡県の場合は20万8,000円~28万9,000円、北海道の場合は17万9,000円〜24万1,000円となっています。

平均月収の調査結果が公開されていない一部の都道府県を除いた平均月収一覧は次の表のとおりです。

はり師・きゅう師・あん摩マッサージ師の平均月収※(2019年)
都道府県 平均月収
神奈川県 22.8 ~ 29.8万円
千葉県 22.5 ~ 32.7万円
大阪府 22.5 ~ 29.7万円
東京都 22.4 ~ 28.9万円
愛知県 22 ~ 31.6万円
奈良県 22 ~ 31.6万円
京都府 21.9 ~ 31.8万円
埼玉県 21.5 ~ 28.9万円
滋賀県 20.8 ~ 30.8万円
福岡県 20.8 ~ 28.9万円
兵庫県 20.5 ~ 28.7万円
香川県 20.3 ~ 29.6万円
三重県 20.3 ~ 27.8万円
長野県 20.2 ~ 25.9万円
静岡県 20.2 ~ 25.7万円
栃木県 20.1 ~ 28.5万円
大分県 20.1 ~ 28.2万円
佐賀県 20.1 ~ 26.9万円
岐阜県 20 ~ 27.6万円
和歌山県 20 ~ 26万円
徳島県 19.9 ~ 32.2万円
鹿児島県 19.9 ~ 27.5万円
福島県 19.8 ~ 31.4万円
広島県 19.8 ~ 29.1万円
長崎県 19.7 ~ 31.3万円
石川県 19.7 ~ 25.3万円
山梨県 19.4 ~ 27.8万円
富山県 19.3 ~ 28.3万円
秋田県 19.1 ~ 28.1万円
鳥取県 18.9 ~ 26.6万円
山口県 18.9 ~ 26.1万円
茨城県 18.8 ~ 28.7万円
熊本県 18.8 ~ 27.5万円
宮崎県 18.6 ~ 25.7万円
群馬県 18.5 ~ 25.8万円
宮城県 18.4 ~ 26.8万円
新潟県 18.4 ~ 26.6万円
岡山県 18.4 ~ 26.6万円
岩手県 17.9 ~ 27.5万円
北海道 17.9 ~ 24.1万円
青森県 17.6 ~ 22.2万円
山形県 17.5 ~ 25.2万円
沖縄県 17.4 ~ 28.3万円


※ハローワークの無期フルタイム求人の賃金欄の下限・上限の平均(実数値)

(出典:「職業情報提供サイト」(日本版O-NET)

鍼灸師の手取り月収はいくら?

鍼灸師の平均月収は25万1,000円であると先程紹介しましたが、月収全てが自分の銀行口座に入金されるわけではありません。月収はいわゆる「額面月収」と「手取り月収」の2つに分けて考えましょう。

額面月収

額面月収とは、税金や年金などを差し引く前の金額です。求人票などに掲載されているのはこの額面月収で、実際に自分の銀行口座に振り込まれるのは額面月収から「住民税」や「所得税」、「厚生年金」、「健康保険」、「雇用保険」を差し引かれた金額です。

一部の例外を除き、初任給や働き始めて1年目の額面月収には住民税がかかりません。ただし、2年目になると住民税の納税義務が発生するため、1年目から昇給していない場合、住民税の金額分だけ自由に使えるお金が減ってしまうことに注意が必要です。

手取り月収

  • 額面月収が25万円なら約20万円

額面月収から税金や年金、保険などを差し引いた「後」の金額のことを手取り月収といいます。

住民税や所得税は額面月収の金額によって変わります。年収が高ければ高いほど、税金の金額も高くなります。

このため、一概に税金はいくらになるとはいえませんが、手取り月収は額面月収の8割程度になるといわれています。例えば、額面月収が25万円なら約20万円と考えるとよいでしょう。

鍼灸師が収入を上げるための手段は?

  • 収入を上げる手段1:独立・開業する
  • 収入を上げる手段2:柔道整復師の資格を取得

鍼灸師になったあとである程度大きく収入を上げたい場合、独立・開業や新たに資格を取得するといった手段があります。

収入を上げる手段1:独立・開業する

はり師ときゅう師はともに独立・開業が認められた国家資格であり、鍼灸院を開設したり訪問治療サービスを独自で始めたりすることが可能です。経営がうまくいけば既存の鍼灸院に勤めるよりも、多くの収入を得ることができる可能性が高まります。

これまでに紹介した「第5回 あん摩マッサージ指圧師・はり師及びきゅう師 免許取得者の進路状況アンケート調査」では、独立・開業している人の平均月収も紹介されていますので、独立開業していない人と比較してみましょう。

<はり・きゅう施術所を開業している人との比較>
月収 開業していないはり師 開業していないきゅう師 開業者
10万円未満 20.9% 20.7% 50.4%
10万〜15万円未満 11.4% 11.3% 14.4%
15万〜20万円未満 20.8% 21.0% 10.2%
20万〜25万円未満 21.7% 21.7% 6.1%
25万〜30万円未満 11.1% 11.2% 3.0%
30万〜35万円未満 4.4% 4.3% 4.2%
35万〜40万円未満 2.3% 2.4% 3.4%
40万〜45万円未満 1.7% 1.6% 3.0%
45万〜50万円未満 1.1% 1.1% 0.8%
50万〜55万円未満 0.8% 0.8% 1.5%
55万円以上 2.7% 2.7% 2.3%
無回答 1.2% 1.2% 0.8%

出典:第5回あん摩マッサージ指圧師・はり師及びきゅう師 免許取得者の進路状況アンケート調査

このデータから月収35万以上の人の割合(※上記の表における背景色が灰色のゾーン)を合計すると、「開業していないはり師」と「開業していないきゅう師」はともに8.6%にとどまっているのに対し、「開業者」は11.0%と高くなっています。

開業することで高い年収を得られる可能性も出てくる一方で、鍼灸施術所の規模や経営状況によっては平均年収が低くなるケースも。独立・開業を目指したい場合は、若いうちから経営やマネジメントのスキルを身に着けていくことが大切でしょう。

収入を上げる手段2:柔道整復師の資格を取得

新たに「柔道整復師」の資格を取得し、さまざまな施術が可能な人材になることで、収入アップを目指すという方法もあります。

そのほか、鍼灸教員の養成コースがある専門学校に通って、鍼灸師の養成学校で講義を行う教員となることで、収入がアップを目指すという道もあります。

鍼灸師になるためには?国家試験の概要

鍼灸師になるためには、鍼灸師を養成する大学や専門学校で知識や技能を3〜4年にわたって学習・卒業することと、はり師ときゅう師の両方の国家試験に合格する必要があります。

筆記形式で行われる国家試験は毎年1回3月上旬頃に実施され、「はり理論」や「きゅう理論」のほか、共通科目などが挑むことになります。

はり師ときゅう師の人数・施術所の数

厚生労働省の2018年末時点のデータによれば、全国ではり師は12万1,757人、きゅう師は全国で11万9,796人います。年々右肩上がりで資格の保有者は増えており、はり師ときゅう師ともに10年前と比べて約1.4倍となっています。

厚生労働省は「はり及びきゅうを行う施術所」の数の推移も明らかにしています。2018年末時点のデータは3万450カ所となっており、10年前と比べて1.5倍になっています。つまり、資格者の伸び(1.4倍)よりも施術所の伸び(1.5倍)の方が高くなっています。

鍼灸師の有効求人倍率

鍼灸師師の人数は近年増えていますが、求人はどのぐらいあるでしょうか。

求人が多いか少ないか、を考えるためには「有効求人倍率」に注目すると良いでしょう。有効求人倍率とは、仕事を探す人1人に対し、何件の求人があるかを表し、有効求人倍率が1より大きければ「売り手市場」となり就職しやすくなります。

厚生労働省の職業情報提供サイト(日本版O-NET)によると、2019年の「はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師」の有効求人倍率は全国で1.27倍となっており、まだまだ売手市場といえそうです。

平均月収と同じく有効求人倍率も都道府県によって差があります。最も高いのは群馬県の4.44倍となっています。つまり一人の鍼灸師に対して、4.44件の求人があることになります。次点で三重県の2.53倍、茨城県の2.38倍、山梨県の1.86倍となっています。

はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師の有効求人倍率(2019年)
都道府県 有効求人倍率
群馬県 4.44
三重県 2.53
茨城県 2.38
山梨県 1.86
岐阜県 1.72
宮城県 1.69
福島県 1.66
東京都 1.66
大阪府 1.54
京都府 1.45
愛知県 1.44
奈良県 1.39
千葉県 1.37
秋田県 1.35
長野県 1.35
富山県 1.31
北海道 1.27
新潟県 1.27
静岡県 1.25
福岡県 1.24
徳島県 1.22
長崎県 1.17
和歌山県 1.09
埼玉県 1.04
滋賀県 1.04
兵庫県 0.99
神奈川県 0.98
鳥取県 0.95
佐賀県 0.95
山口県 0.9
石川県 0.89
山形県 0.87
沖縄県 0.85
鹿児島県 0.83
岩手県 0.82
広島県 0.8
熊本県 0.78
宮崎県 0.65
香川県 0.63
岡山県 0.56
栃木県 0.55
大分県 0.48
青森県 0.38


(出典:「職業情報提供サイト」(日本版O-NET)

■鍼灸治療を望む人は今後増えていく?

国民医療費におけるはり・きゅうの療養費は、2017年度は前年度比1.5%増、2018年度はほぼ横ばいとなっており、需要が大きく落ち込んでいる状況ではありません。高齢化が進むことを考えれば、鍼灸治療を望む人は今後増えていくことも考えられます。

はり・きゅうによる治療の需要が高まっていくことを考えると、鍼灸師を目指すのであればぜひ将来の独立・開業も視野に入れておきたいところです。そのためには、施術スキルだけではなく、早いうちから経営やマネジメントなどの、幅広いスキルを身に着けられる環境に身を置くことで、将来の選択肢が広がり、収入アップの可能性も高まるでしょう。

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