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鍼灸師として海外で活躍したい!輝くための道と世界の鍼灸師動向

近年、日本を離れて海外移住する人が増えており、2022年10月時点で海外永住者は前年よりも約2万人増えて、約55万人となっています。コロナ渦の規制が緩和されたことから、留学やワーキングホリデーなどの短期滞在を含め、今後さらに増えていくことが予想されます。

その流れのなかで、鍼灸師として自分も海外で働いてみたい、活躍したいと思うことがあるかもしれません。でも、実際に日本の鍼灸師は海外で働くことができるのかどうか、不明な点が多くあると思います。

今回は鍼灸師が日本人として海外で活躍するための道筋や、鍼灸師を取り巻く世界の動向についてご紹介いたします。

海外で働く鍼灸師の役割と日本との違い

日本で鍼灸師と言えば、鍼灸院で働くことが中心のイメージが強いと思います。実際に、日本の鍼灸師はお灸をすえたり、小児鍼を行うなど、鍼灸院などで施術を行うことが多いです。

鍼灸は、中国発祥の東洋医学のひとつです。実際に私が本場の中国研修で目の当たりにしたのは、大きな病院内に鍼灸科が設置されており、西洋医学と合わせて東洋医学も取り入れられていました。リハビリなどの解剖的なアプローチ、機能性障害に対する治療など多岐に渡って提供されていました。

東アジアと文化圏が全く違うアメリカ含む欧米でも、鍼灸は医学や医療として捉えられており、積極的に導入されていることもあります。

もちろん、日本も医療技術職として国家資格制度が整っており、養成方法も確立されてはいます。しかし、明治期以降は実質的に西洋医学とは分離した状態となっており、改革が必要だとも言われています。

 

海外での鍼灸師の資格取得と研修

それでは、海外では鍼灸師の資格はどのように取得する必要があるのでしょうか。日本の鍼灸師資格で働くことは可能なのでしょうか。

国によって異なる日本の鍼灸師資格の扱い

日本や中国以外で、一番鍼灸が盛んな国はアメリカだと感じますが、アメリカは州ごとに資格制度が導入されているため、日本のように一度国家資格に合格すれば全国で使えるということにはなりません。

一方で、鍼灸師という資格制度がなく医師のみが施術を行える国は、フランスやメキシコなどとなっています。

また、日本の鍼灸師資格をそのまま使える国は、ニュージーランドなど鍼灸師の資格制度を持たない一部の国に限られるというのが現状です。世界一周などを行っているクルーズ船では、募集時に日本の鍼灸師資格での乗船が可能となっていることもあります。

世界各国の資格に関する状況は変わることもあります。最新情報を必ずチェックするようにしてください。

研修やセミナーの機会

鍼灸師として、海外で働くための研修やセミナーはあまり多くない印象ですが、行われている実績があります。

一番身近なものとしては、鍼灸の養成学校にて行われている研修やセミナーです。学校内のセミナーや特別講座として、実際に海外で働いている鍼灸師の話を聞く研修、中国から講師を招いて実習、さらに、学校によってはアメリカや中国へ鍼灸の研修ツアーが行われていることもありますので、一度確認してみても良いでしょう。

また、本格的に海外で鍼灸を学ぶために、留学生として海外の鍼灸学校に入学して学ぶコースが準備されているエージェントもあります。
課程によっては現地での学位を取得することを目的とするコースもあるため、ニーズに応じて適切な課程を選択することで、キャリアの幅を広げることが出来ます。

国によって異なる鍼灸師に対する考え方

日本ではあくまで代替医療という位置付けの鍼灸ですが、中国では病院でも本格的な施術が多く行われています。文化圏の全く違う欧米では、鍼灸に対する注目度が年々高まっており、研究が盛んで取り入れようとする動きも見られ、鍼灸師の位置付けに高まりが見られます。

筆者は一時期フランスに滞在していた経験があります。そこでは顧客にフランス人の医師で鍼灸を行っている女性がおり、一定の需要がある様子でした。また、実際にacupunctureという言葉を英仏で伝えると、詳しく理解はしていないけれども、その意味を全く知らないという人は皆無でした。

これらより考えると、日本においてアロマセラピーやリフレクソロジーが一般的なように、東アジア発祥の医療技術として、鍼灸はリラクゼーションから治療まで様々な分野で注目されていると捉えることが出来るのではないでしょうか。

海外での鍼灸治療のメリットとデメリット

まだまだ閉鎖的な日本の鍼灸業界とは全く異なる、海外で鍼灸師として働くということは、夢やロマンがありますし、異文化の中で経験を積むことは自分自身を成長させてくれるという大きなメリットがありますが、デメリットも多くあります。

患者とのコミュニケーション

海外で鍼灸師として働くうえで、一番問題となるのが言葉の壁と言えるでしょう。島国である日本で育つ日本人にとって英語を話すことは難易度が高く、英語でのコミュニケーション能力も高める必要があります。

また、海外は英語圏ばかりではありませんので、その場合には英語以外の現地の言葉も学ぶ必要があります。

一方、言葉の壁を努力で乗り越え、外国人であるということのデメリットを払拭することができれば、日本人として鍼灸師として働くことは大きな達成感を得ることができ、大きな成長につながるでしょう。

鍼灸師としての考え方の違い

日本では、日本人の鍼灸師は当たり前の存在かもしれませんが、文化が全く違う海外では東洋学発祥の地から来た「日本人の鍼灸師」として見られるという違いがあります。鍼灸治療を伝統的に行ってきた本場から、海外に移住し技術を伝道している鍼灸師と認識されることで、鍼灸師や鍼灸技術に対する期待値は高まり、一目置かれる存在として見てもらえることがあります。

その反面、海外では日本の国内よりも鍼灸に対する具体的なイメージが少なく、一般的ではないため、受け入れてもらいにくいというデメリットもあるかもしれません。

日本の鍼灸師が海外で成功するためのポイント

鍼灸師としての技術力の確かさはもちろんのこと、まず、第一に言葉の壁をクリアにすること。次に、言葉の壁を感じさせないコミュニケーション能力が必要となります。

海外では、日本の当たり前が当たり前ではなく、思い通りにうまく行かないことも多くあります。日本は治安が良く、インフラや設備に恵まれている希少な国です。個人差はあるものの、日本人は概ね穏やかな傾向がありますが、海外では正反対の人も多く、人種の違いによって価値観も様々です。

鍼灸師としての仕事以外でも、現地でネットワークを構築し、様々な問題や課題に対して、モチベーションを高く保って乗り越えて行く必要があります。それらを乗り越えることができれば、外国人鍼灸師として海外で働くことは、非常に大きな経験となるでしょう。

まとめ

鍼灸師が海外で働くのは容易ではありません。国ごとに、医師のみしか施術できない国、現地で資格取得が必要な国など様々です。現地で働くあるいは、学校に入るためには高度な語学力が欠かせません。鍼灸の技術に加えて、資格取得やコミュニケーションに必要な語学の勉強も行わなければなりません。

日本人として鍼灸技術を海外で広めることは大変やりがいのある仕事であると言えるでしょう。言葉の壁や、文化の違いなど様々な困難を乗り越える必要はありますが、日本以外で鍼灸師として働くという夢を持って学校に通ったり働くことでモチベーションアップにつながります。夢を叶えるべく、キャリアプランに取り入れてみてはいかがでしょうか。

【参照URL】
冒頭の在留邦人の動向、永住者について
メキシコにおける鍼治療の専門化の歴史

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