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鍼灸師は「たいへん、やめとけ」の声も。その実情とキャリアを積むための方法を解説

はり師、きゅう師の国家資格を取得した後、鍼灸師として実際にどのように業務に当たっているのか、気になる学生さんは多いでしょう。鍼灸師は「たいへんだからやめとけ」といわれることもありますが、それは本当なのでしょうか。1日の業務の流れや、長くキャリアにおいて活躍するためのコツ、キャリアプランの立て方などを紹介します。

実は激戦?鍼灸師としての就職の実情は

鍼灸師の資格を取った後は、鍼灸院や鍼灸整骨院に就職して働くのが一般的です。鍼灸師としてある程度キャリアを積んだ後は、ステップアップのための転職や独立開業を考える人もいるでしょう。

鍼灸師はいわゆる「手に職」系の資格であるため、そのスキルを生かし、長年にわたって活躍できる可能性は高いといえます。とはいえ、資格があれば必ず就職でき、稼げるというものでもないため、うまくいかない現実に辛い思いをすることもあるでしょう。

鍼灸院も鍼灸師も増加。供給過多に陥る可能性も

厚生労働省の「衛生行政報告令(就業医療関係者)の概況」によると、「はり及びきゅうを行う施術所」は2018年時点で3万450ヵ所も存在しているとのことです。2008年時点の1万9,451ヵ所から、10年で1万ヵ所以上も増加しています。

「施術院が増えれば就職先も増えるのでは」と考える人もいるでしょう。確かに求人を出す院は増えるでしょうが、給与や手当などの待遇に期待できるかというと、別の話です。

施術院の増加は、ライバル企業がそれだけ多くなることを意味します。また、「多くの施術院で患者様を取り合う」構造を生みます。鍼灸師の数も、2008年に比べ約3万5,000人増加しているのが現状です。

鍼灸師に対する需要よりも供給量が多ければ、せっかく手に職をつけ、専門スキルを生かしながら働けたとしても、思ったように稼げないかもしれません。鍼灸師を目指す学生さんは、資格取得後に、どのように活躍していくのかを考える必要があるのです。

 

独立も考えられる鍼灸師の資格とキャリア

鍼灸師として長く活躍したいと考える人のなかには、将来的な独立を視野に入れている人も少なくありません。就職後にはどのようにしてキャリアを積み上げていきたいのか、ある程度具体的に考えてみることも大切です。

▽鍼灸師として独立する場合のキャリアプラン例

  • 大手グループ院に就職して役職につく
  • 「鍼灸師+別の資格」でスキルに幅を持たせて、独立に備える
  • 独立開業し、事業規模を拡大して複数院を経営する など

独立開業を目指す場合、さまざまな患者様が訪れる大手グループ院で経験を積みながら、役職に就くなどしてマネジメントや経営について学び、独立の基盤づくりをしましょう。フランチャイズ展開をしている院であれば、社内のフランチャイズ制度を利用しての独立開業も可能かもしれません。

鍼灸師として活躍しながら、別の資格を取得してスキルに幅を持たせ独立に備える方法もあります。将来的にどのような治療院を開設したいのかをイメージして、必要な資格を取得していきましょう。

独立開業後は、事業規模を拡大して複数の院を開設し経営する道もあります。この場合、経営に関する知識やマネジメント力が求められます。

将来どのような形で活躍したいのかをイメージして、必要な知識、スキル、資格を取得し開業のための地盤を固めていきましょう。

はり、きゅうだけじゃない鍼灸師の実際の仕事

鍼灸師の仕事が「たいへん……」といわれるのはなぜなのでしょうか。ここからは、鍼灸師の仕事の内容や1日の流れを紹介します。

治療において重要なカウンセリングという仕事

鍼灸師は、患者様から不調の原因を取り除くために、なぜ不調を感じているのかをカウンセリングと触診から読み取ります。

患者様とコミュニケーションをとりながら行うカウンセリングは、性格も症状も異なる患者様と相対するため、知識だけでは乗り切れません。知識に加え、経験とスキル、さらにコミュニケーション能力が求められるカウンセリングは、想像よりもたいへんな業務です。

対人コミュニケーションが苦手な人は、カウンセリングを負担に感じることがあるかもしれません。特に、体の不調や生活習慣は、患者様のプライベートな部分と密接に関わっています。そのため、カウンセリングに抵抗感を示す患者様も少なくありません。そこに踏み込むためには、患者様との間に信頼関係を構築することが大切です。

仕事とはいえ、相手のプライベートに踏み込むことにためらいを感じることも多いでしょう。それでも患者様の悩みや症状に寄り添って、しっかりと話を引き出す必要があります。

体力も大事。鍼灸師の一日

治療院で働く鍼灸師の1日の流れについてみていきましょう。

▽治療院で働く鍼灸師の1日例

  1. 出勤
  2. 清掃、ミーティング
  3. 診療
  4. 昼休憩
  5. 診療
  6. 清掃、ミーティング
  7. 退勤

出勤したらまず清掃を開始し、スタッフが集まり次第ミーティングを行います。診療時間になったら患者様への対応が始まります。患者様とコミュニケーションをとりながら話をよく聞き、治療方針を決めて治療にあたりましょう。治療後にはカルテ(施術録)に、患者様の症状や行った治療について記録します。

昼休憩をとり、その後再び診療が始まります。忙しい院では、診療時間終了間際まで途切れず患者様が訪れます。

診療時間が終わったら、院内を清掃して1日の振り返りミーティングを行います。鍼灸師は1日中といってもよいくらい体を動かし続けている仕事なので、体力が必要です。

スキル不足だと厳しい業界。人気の鍼灸師の条件は

資格取得後、患者様が途切れないような鍼灸師として活躍したいのなら、常にスキルとコミュニケーション能力を高める努力が必要です。その条件は「患者様のニーズに応えられる技術力」と「コミュニケーション能力」の2つです。

どちらかが秀でていても、どちらかがおろそかであってもいけません。どうすれば患者様の悩みや不調が解消されるのか、考えながら行動しましょう。

キャリアプランを立て将来を考える

鍼灸師の将来についての不安感が拭えないという方は、より具体的なキャリアプランを立ててみましょう。実際に働くなかで、「もっとこんなことをしてみたい」「独立時は〇〇専門の鍼灸院を開業したい」など将来への希望が出てくるはずです。

▽鍼灸師の将来のビジョン、キャリアプラン例

  • ニーズが高まっている女性向け美容鍼の院を立ち上げる
  • スポーツをする学生さんや社会人に向けてスポーツ専門の院を立ち上げる
  • 大手グループ院で院長になる

近年ニーズが急増している分野で活躍する方法もあります。美容鍼もその1つです。顔に鍼を刺すことで血行促進や皮膚の代謝を促すとされる美容鍼は最近、ニーズが高まっているようです。鍼灸師のスキルを生かして美容鍼の個人院を開設するのなら、美容に関する知識を深めるとともに、美容関連の資格も取っておくといいでしょう。スポーツをする学生さんや社会人が多く利用する個人院をイメージするなら、スポーツトレーナーの資格を取得することで治療の幅が広がります。

大手グループ院の院長を目指すのもキャリアの1つです。院長にステップアップすることで、経営やスタッフのマネジメントなどに携わることになります。治療院運営の責任者をもつことになりますが、そのぶん収入アップも見込めるでしょう。

キャリアプランを立てそれに沿って着実にキャリアアップできれば、収入も安定していくでしょう。独立開業した場合でも、ニーズを見極めれば、患者様に求められる治療院として多くの人に利用してもらえるはずです。

まとめ:体力はもちろん、スキルアップも必要。スキルの幅を広げることでキャリアパスも豊富に!

鍼灸師の仕事は、確かに体力を必要とします。コミュニケーション能力も求められるため、心身ともに疲労を感じることもあるでしょう。また、社会的に鍼灸院のニーズは増していますが、一方で競合他社も増えています。そのため、独立開業しても経営が思うようにいかないことも想定されます。「鍼灸師はやめておけ」という人は、このような鍼灸師の実際を知ったうえでアドバイスをしてくれているのかもしれません。

しかし、近年では独立開業だけでなく、介護施設や医療施設での勤務などキャリアの幅が広がっています。また、「手に職」系の仕事である鍼灸師は、その専門性を高めてスペシャリストとして活躍することも可能です。また、スキルや資格の組み合わせ次第でキャリアの幅も広げられます。独自のサービスを開発できれば、長きに渡って活躍できる鍼灸師になることも夢ではありません。

「やめておけ」といわれることもある鍼灸師の仕事ですが、近年では介護や美容の分野にもニーズがあり、さまざまなキャリアが用意されています。将来に向けて、今からキャリアプランを立て、スキルを高めたりや資格を取得したりすることを考えてみてはいかがでしょうか。

 

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