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鍼灸師と柔道整復師の違いとは?どっちの資格を目指すか迷っている方必見

鍼灸師と柔道整復師は伝統的な医療を行うイメージがあるのではないでしょうか。とはいえ、仕事内容や就職先、資格の取得方法などで異なる部分もあるのです。そのため「結局は、なにが違うの?」といった疑問を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで、本記事では鍼灸師と柔道整復師の違いについて、実際に両方の資格を取得した施術者が解説します。仕事の内容から、給与、資格の取り方まで異なる点を踏まえて解説するので、ぜひ参考にしてください。

鍼灸師と柔道整復師の違い

鍼灸師と柔道整復師は、独立開業権を持った数少ない医療系国家資格です。独立開業権があると、医療サービスを提供するための施術所を自分で運営することができます。

そこで気になるのが、鍼灸師と柔道整復師の仕事内容の違いです。また就職した後に働く場所や、給与についても興味があることでしょう。両者の違いについて、詳しく解説します。

仕事内容の違い

鍼灸師柔道整復師の仕事内容の違いを解説します。両社の仕事内容には、対応できる疾患や施術方法に大きな違いがあります。

鍼灸師の仕事内容

鍼灸師の資格は「鍼(はり)」と「灸(きゅう)」を使い、経穴と言われるツボや筋肉のこりを刺激して施術を行う職業です。内臓の疾患から関節痛、精神疾患まで幅広い症状に対応できるのも鍼灸師の特徴です。

最近ではスポーツ鍼灸や美容鍼灸といった新しいジャンルも開拓され、鍼灸師の仕事内容はますます多様性を極めています。実際に、スポーツ鍼灸や美容鍼灸を指導するための授業科目がある専門学校もあります。

柔道整復師の仕事内容

柔道整復師は骨折・脱臼・打撲・捻挫に対して治療を行う職業です。具体的な業務内容は、次の通りになります。

  • 骨折や脱臼をした部分を整えて、包帯で固定する
  • 打撲や捻挫した箇所を冷やして炎症を抑える
  • 怪我をした箇所を温めたり、電気を当てることで治癒をサポートする

柔道整復師は原因が明確で、かつ最近の怪我であれば、保険を適用して施術することが認められています。しかし骨折や脱臼に限り、医師に同意を得る必要もあるのです(応急処置は除く)。

また最近の柔道整復師は専門的な知識を利用して、慢性的な肩こりや腰痛、膝の痛みに対して保険を適用しない自費施術を行うところも増えてきました。

鍼灸師と柔道整復師の働く場所の違い

鍼灸師と柔道整復師の働く場所の違いは、それほど大きくありません。なぜなら鍼灸師と柔道整復師はともに整骨院に就職することが多いからです。

鍼灸施術と柔道整復術の両方を患者に提供する整骨院が、鍼灸師と柔道整復師を主に採用します。もしくは数は少ないながらも、整形外科に就職する人も一部には存在します。

とはいえ鍼灸師に限り、鍼灸院に就職する点は、柔道整復師と鍼灸師との大きな違いです。鍼灸院は柔道整復師を雇うことはないので、鍼灸院に就職するのは鍼灸師のみです。最近では美容鍼灸を扱う鍼灸院が増えてきたので、鍼灸院に就職する学生は以前よりも増えたと考えられます。

柔道整復師の就職先はどんなところ?整骨院や病院など活躍できる場所をご紹介

鍼灸師と柔道整復師、給与に違いはある?

鍼灸師と柔道整復師の給与に、大きな違いはありません。両者ともに、一般企業に雇われたときの給与と同じくらいだと考えられます。

ただし、役職に応じた給与の違いや独立開業したときの収入の違いはあります。たとえば整骨院で院長として働くと給料アップが見込めますし、独立開業で成功した場合は大きく収入アップすることもあるのです。

独立した場合は技術の高低による収入の違いも大きく、誰にも真似ができないような独自の技術があると、年収数千万円を目指せることもあります。
 

 

鍼灸師と柔道整復師の資格の取得方法

鍼灸師と柔道整復師はいずれも国家資格であり、国が認めた専門学校や大学を卒業した後に試験を受けられます。

合格率はともに70~80%台ですが、鍼灸師と柔道整復師の合格率は年々低下傾向にあります。

柔道整復研修試験財団の発表(※1)によると、平成26年以降の柔道整復師の合格率はすべて70%を下回る状況です。一方、東洋療法研修試験財団が発表(※2)した鍼灸師の合格率も平成23年以降は80%を超えることはなく、60%を下回る年もありました。

ここでは鍼灸師と柔道整復師の資格の取得方法をそれぞれ解説します。

※1公益財団法人 柔道整復研修試験財団 公式ホームページ「柔道整復師国家試験の実施
※2公益財団法人 東洋療法研修試験財団 公式ホームページ「過去の受験者数

柔道整復師の資格取得方法

柔道整復師は、国家試験と実技試験に加え、柔道の試験にも合格する必要があります。柔道整復師になるために必要な試験をすべて解説するので、参考にしてください。

柔道整復師の実技試験

柔道整復師の実技試験には、包帯を巻く試験と脱臼や打撲を整復する試験があります。整復とは、骨折や脱臼をした箇所をもとの状態に戻す手技のことです。

包帯を巻いたり、整復の手技を行ったりするときは、試験を受ける生徒とは別の生徒が患者役となって実技試験が実施されます。

授業で習った複数の包帯の巻き方や整復手技の中からランダムで試験問題が出題されます。出題された問題に対して、時間内に包帯巻きと整復手技を完成させなければなりません。

完成したら、包帯の巻き方の美しさや整復手技の正確さについて評価されます。

さらに、柔道整復師は柔道の試験にも合格する必要があります。柔道の試験も、授業で習った技の中から、ランダムに出題されるのです。柔道の試験は、道場に入るところから試験が始まり、礼儀作法や技の美しさと正確性などを評価されます。

柔道整復師の国家試験

柔道整復師の筆記による国家試験は、すべて選択式で出題されます。毎年1回実施され、解剖学や生理学、整形外科学などの医学に必要な知識を問われます。

一方で、柔道整復理論といわれる柔道整復師に関する専門分野や、柔道整復師に関係する法律についての問題も出題されるのです。

合格率は低下傾向にあり、ここ数年は60%程度の合格率で推移しています。

柔道整復師の難易度は高い?合格率や試験の概要を解説

鍼灸師の資格の取得方法

鍼灸師の資格は、はり師ときゅう師の二つの資格からなります。ここでは、はり師きゅう師それぞれの実技試験と国家試験についてお伝えします。

鍼灸師の実技試験

鍼灸師の実技試験は、はり師ときゅう師についての試験が、それぞれ別々に行われます。

はり師の実技試験は、試験を受ける生徒とは別の生徒が患者役となり、実際に針を皮膚に打ちます。針を打つというのは、針を刺すことで、鍼灸師の間では「刺す」よりも「打つ」と表現されることが多いです。

鍼を打つ前の準備段階である、消毒の手順も実技試験の評価対象になります。そのため、消毒から丁寧に行わなければなりません。爪の状態は試験前にチェックされ、短くしていないと試験を受ける前に不合格になるため、注意が必要です。

お灸の実技試験も、針の試験と同じように行われます。お灸の場合は、もぐさを米粒の半分くらいの大きさにして、患者役の皮膚に置き線香で火をつけます。その後、もぐさや線香の火を消すまでが実技試験となります。

また、はり師ときゅう師の両方の実技試験で、ツボの位置についての知識も問われます。そのため、授業で習ったツボに正確に針を打ったり、灸を据えたりする必要があるのです。

鍼灸師の国家試験

鍼灸師の筆記による国家試験は、はり師ときゅう師についての各専門試験を受けた後に、共通の問題を解く流れです。

共通の問題には、解剖学や生理学、公衆衛生学といった現代医療に関する問題と、東洋医学理論や経絡、経穴、鍼灸師の法律に関する問題が出題されます。つまり、鍼灸師の国家試験では、現代医療である西洋医学と伝統医療である東洋医学の両方の知識が問われるのです。

また鍼灸師は、はり師ときゅう師の異なる国家資格を一度の試験で受けることになります。そのため、試験結果でどちらかが不合格になったら、片方の資格は取得できなくなるので注意が必要です。

鍼灸師と柔道整復師の両方の資格が取れる学校も

学校によっては、柔道整復師と鍼灸師の両方の資格を取得可能です。ダブルライセンスの取り方には、一度に両方の資格を取る方法と資格を一つずつ取得する方法があります。

一度に両方の資格を取る場合は、たとえば午前は鍼灸師の授業を受け、午後は柔道整復師の授業を受けることになります。午前と午後の順番の決まり方は、学校によります。

いずれにしても、同時に2つの資格を取る場合は、授業や定期試験、実技試験が倍になるので大変です。とはいえ、解剖学や生理学などの共通する科目は、どちらか一方が免除されます。

ダブルライセンスのメリットは、就職先の幅が広がることや対応できる症状のバリエーションが増えることです。たとえば、整骨院で働く場合でも柔道整復師として包帯を巻けるうえに、肩こりや腰痛に対して鍼で痛みを緩和できるといった幅広い活躍が可能です。

柔道整復師と鍼灸師の違いまとめ

柔道整復師と鍼灸師の仕事内容には大きな違いがあります。一方で、就職場所や給与にはそれほどの違いはなく、独立開業で成功すれば大きく収入アップが期待できるのも共通の魅力です。

柔道整復師になるには、実技試験と筆記試験、柔道の試験を受けて国家資格を取得する必要があります。一方で鍼灸師の場合は「はり師」と「きゅう師」の2つの資格から成立します。そのため、鍼灸師になるための実技試験と筆記試験も「はり師」と「きゅう師」で別々に受ける必要があるのです。

柔道整復師と鍼灸師の両方を取得するのは大変ですが、就職先や仕事の幅が広がるといったメリットがあります。柔道整復師と鍼灸師の違いを理解して、自分に適性のあった資格取得を目指してください。

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