黒本を購入する

鍼灸師のための開業ガイド~後悔しない開業戦略

数ある医療技術職のなかでも開業できる資格は少ないものです。そのなかでも、鍼灸師は開業できる資格として知られており、鍼灸師を目指すきっかけのひとつとして大きなウェイトを占めているのではないでしょうか。

もちろん、鍼灸院や医療機関などで働いて経験を積むことも大切ですが、自分自身の鍼灸院を持つという夢や目標を持つことで合理的に勉強を進めることができますし、開業することができれば鍼灸師としてのやりがいをより感じやすくなるのではないでしょうか。

今回は、鍼灸師が開業するために知っておきたいことについてご紹介します。

鍼灸師は開業権のある国家資格

学生が鍼灸師を目指す理由のひとつとして、独立開業ができることが挙げられます。
自分の鍼灸院を持ち、患者さんに来ていただき、喜んでもらう、ということは鍼灸師にとって、大変やりがいを感じるものです。
開業することで、鍼灸師として自分の方向性を極めながら、年齢に関わらず鍼灸師を続けることもできます。

開業には鍼灸師の国家資格に合格して免許を取得する必要があります。また、令和3年より医師の同意に基づいて保険施術を行う場合には、療養費の受領委任を取り扱う「施術管理者」の資格取得も必須となりました。1年以上の実務経験を経た後、施術管理者研修を受けて施術管理者登録を行います。保険診療を行うか分からない、という場合でも念のためチェックしておくと良いでしょう。

 

開業する前に身に着けておきたい鍼灸師としてのスキル

開業する前に得ておきたいスキルは多くありますが、一番大切なのは鍼灸師としての高い技術力であると言えるでしょう。患者さんが訴える痛みや苦痛を緩和することはもちろん、リラックスした心身状態に導けるよう、鍼灸師として多角的にサポートすることが必要です。

患者さんに喜んでもらう、という観点で言えば施術以外の接客面を磨くことも大切です。鍼灸師が扱うのは、患者さんの痛みなどの症状であると同時に患者さん自身である、とも言えます。

例えば、会話のなかで患者さんの辛い気持ちに寄り添う共感力、心地よく過ごしてもらえる気配りなど、鍼灸の施術以外の項目でも満足してもらえるよう考えて行動する必要があります。

開業に向けた準備

ここからは、鍼灸師が開業するために必要な準備を具体的にご紹介いたします。

必要最低限の計画を練る

自分自身の鍼灸師としてのこれまでのキャリア、培ってきたスキルなどをふまえて、どのような施術を行い、どのような患者さんに来てもらうのか、といった計画のイメージを練ります。基本的には、それまで行ってきた施術方法や治療方法をベースに考えます。

あるいは、これから鍼灸師として働く予定であれば、どのような鍼灸院を開業したいかを軸に就職先を決めることで、計画的に進めることができます。足りないスキルがあれば、研修に参加するなどして取得するようにしましょう。

鍼灸師としてのビジネスプランがある程度固まれば、次に必要なのは資金です。開業するためには、鍼灸院を開業する物件の取得、内装の整備、鍼灸に必要な設備や消耗品の準備、家具などの調達など、多くの資金が必要です。

法的な面では、施術室と待合室の広さなどを考慮して開業しなければなりません。保険診療を行う予定であれば、施術管理者の登録が必要です。

立地や施設の設計について具体的にイメージしていく

鍼灸院をどこで開院するかは、開業において最も重要な要素のひとつです。そのためには、どのような患者さんに来てもらうのか、ターゲットの設定も必要です。都市部であれば、仕事帰りによってもらえる駅に近い立地、高齢者施設や病院が集まる地域の近く、スポーツや部活動が盛んな地域、など需要の有無を見極めて設定します。

およそのターゲットが決まれば、鍼灸院の設備についてもイメージします。親近感を感じてもらいやすい鍼灸整骨院に近い設備、プライベート空間を確保したエステサロンのような空間、など自分自身がどのような鍼灸施術を行うかによって考えます。

サービスと料金設定

鍼灸院で行うサービス内容を考えます。鍼灸は一般的に自費診療となるため、自身で料金設定を行うことが可能です。どのような施術を、どれぐらいの時間で行い、どの程度の施術料金にするか、具体的にイメージしてみましょう。

30分で〇〇円、1時間で△△円など鍼灸院を開業したいと思う地域の物価や相場を元に設定します。近隣の鍼灸院など、競合のサービス内容や料金設定のチェックも欠かさずに行いましょう。

マーケティングと顧客獲得

開業後に一番課題となるのは、いわゆる集客についてです。路面にあるテナントで鍼灸院を開業したとしても、前を通りがかる人の数には限りがあります。ビルの1室で鍼灸院を開業する場合には、テナント料をおさえることができますが、集客に関してはしっかりと考える必要があります。

近年は、SNSを活用した集客も盛んです。以前は難しかった個人での発信が容易になったことで、鍼灸院のアピールができるようになり、集客の助けになります。鍼灸院と言っても形態は様々なため、どのような施術を行うか、鍼灸院の魅力が伝わるよう、力を入れて戦略的に考えましょう。

忘れてはいけない人とお金の管理

鍼灸院を開業し経営していくためには、人とお金の管理が必要不可欠となります。ひとりで開業するという場合を除いて、他の鍼灸師やスタッフの管理を行わなければなりません。

実費診療を行うことの多い鍼灸院に、お金の出入りはつきものです。経営力も問われるので、鍼灸師としてのスキルアップと共に、人やお金の管理についてもイメージしておくと良いでしょう。

鍼灸師が開業して成功するために

鍼灸師の数は年々増加しており、鍼灸院の競争は益々激しくなると予想されます。鍼灸院を長く経営するためには、多くの患者さんに来てもらうことが第一条件となります。新規で来られる患者さんを増やすこと、リピート率を高めることを意識して、常に患者さんに来てもらえる鍼灸院を目指しましょう。

新規で来院後は次の予約をとってもらえるように満足のいく施術を行い、リピート率を高めていきます。顧客の獲得については、マーケティングについてもしっかりと学ぶ必要があります。リピートについては、鍼灸師としての高い技術が必須なため、スキルアップを行い続けなければなりません。

どのようなスキルを持ってどのような鍼灸院を経営し、続けていくか、イメージする段階で道筋をクリアにするとスムーズに進めることができるかもしれません。学生のうちにできることとしては、鍼灸院で経験を積むことのほか、どのような鍼灸師になるためにどこに就職するか、既に開業している先輩に話を聞く、などを行うことで開業の準備を始めることにつながります。

まとめ

鍼灸師を目指すなら、誰しもが憧れる開業という選択肢ですが、準備には思った以上に時間がかかります。必要になってから慌てて考える、ということにならないように、学生のうちに少しずつ考えて、その目標に応じたキャリアプランを練るようにすることがおすすめです。

もちろん、鍼灸師の資格取得後でも開業に関する戦略を練ることはできます。実際に鍼灸師として働くことで見えてくる課題やクリアにしないといけない問題などに直面することで、より幅広い視野で開業についてイメージすることができるでしょう。

いつかは開業する、という夢や目標を持って鍼灸の勉強や仕事に取り組むことで、近道を目指しましょう。

【参照URL】
公益財団法人東洋療法研修試験財団 施術管理者研修のご案内
公益社団法人 神奈川県鍼灸師会 保険部

関連記事

鍼・灸・あん摩マッサージ指圧師編/柔道整復師編
国試黒本の購入はこちら

購入ページへ